木下みつひろ講師がアナタの愛車とドラテクを診断!

2021/07/24 14:00

 

木下講師の総括

 

今回のように上達のために設定されたコースでの走行によって得られるもの、というのがあります。

 

(1)まず1コーナーでは、直進で早めにシフトアップして3速に入れるという加速状態から、フルに近いブレーキングとヒール&トー、そしてブレーキのリリースとターンインという、基本的な部分をチェックするというもの。

 

(2)1コーナーをクリアして左に旋回する2コーナーでは、アクセルOFFだけではアンダーステアとなるので、ブレーキングをし、どこまでブレーキを残せばフロントが入ってくれるのかを確認。

 

(3)最終の右コーナーはタイトなものとすることで、瞬間的な強いブレーキングで車速を落とし、ブレーキペダルのリリースはゆっくりとすることで小さく曲がる。

 

このような一連の動作を終えたうえで、

(4)ゴール地点には、「ブレーキ開始位置」と、「ブレーキリリースの開始タイミング」、そして「完全にブレーキをリリースするタイミング」の3ヶ所にパイロンを置くことで、曲がるためのブレーキングのペダルストローク操作を意識できるようにしている。

 

こういう計算されたレイアウト設定は、サーキットでは難しいものです。

 

そのうえで、気付いた点があります。それは、ブレーキング。ほとんどの参加者は、(1)で一度は3速からのヒール&トーを試してくれたのですが、その一度のトライのあとは、2速までの加速からのブレーキングとなっていました。上手くやろうとする意識が強く、ヒール&トーをすると減速のブレーキがおろそかになるとか、ブレーキリリースとステアリングのタイミングがとれなくなる、ということから、失敗を恐れがちだったのではないかと思います。

 

しかしこの場はトレーニングなので、失敗してもよいのです。それをしっかり伝えられなかったのは、講師としての自身の反省点と感じています。参加者の方も、コースを走る際には、ただ走るのではなく、想像を膨らませてもらい、どう走るのかを考えてもらえば、より濃いトレーニングになったのではないかと思います。

今回のコース設定では、(1)で低い回転数でヒール&トーをすることになります。そのため、アクセルをあおりすぎて高い回転数でシフトダウンをすると、せっかくブレーキングで前荷重になったクルマが、加速状態となってしまい、荷重が後ろに行ってしまうことになります。そのため、アクセルをわずかにあおって荷重を前に残したままブレーキを抜いていく操作が必要で、これはとても難しいことです。しかしその操作がきれいにできれば、もっと車速が高いサーキットに行ったときには、ブレーキングの時間が長くなるため、簡単に、正確に前荷重のままのヒール&トーができます。

 

 

また、今回参加してもらった方々のクルマは、どれも極めて動きのよいサスペンションとなっていました。言い換えれば、とんがったところがないアシという感じです。そのため動きが素直で、まとまったクルマが多かったと思います。

ブレーキに関しても、コントロール性が高いクルマが多く、サスペンションもブレーキも、アフターパーツはもの凄く進化しているな、と感じました。ひと昔前のように、ブレーキが効きすぎ、というクルマはなかったですね。ABSが効いてもリカバリーができる。そういうクルマばかりだったので、ドライバーとしては扱いやすいし、練習もしやすい、というものとなっていたと思います。

 

ただし、駆動系に関しては、やはりL.S.D.はほしいところ。数台、L.S.D.が入っていませんでしたが、サスペンションとブレーキ、L.S.D.は、スポーツ走行でクルマを操作する、少しでも上手くなりたい、という中での最低条件と考えたほうがよいでしょう。

 

カリキュラムの最後には、定常円旋回の練習エリアを設けた

 

雨で滑りやすい状況だったので、低い速度でいろいろなことが試せた、というのがよかったと思います。強過ぎるブレーキではABSがすぐ効きますし、速くステアリングを切るとアンダーステアが出てしまう。それがわかりやすい状況だったということから、参加者のドライビングをチェックしやすかったですし、クルマのサスペンションの動き、ブレーキの使いやすさなども確認しやすかったです。もちろん、参加者も、小さなリスクでいろいろ試すことができ、よい練習になったのではないでしょうか。

 

木下講師も同乗、逆同乗と1日お疲れ様でした!

 

次回は、ヒール&トーのトレーニングもはっきりと組み込みたいと思っています。正しいヒール&トーができれば、より短い距離での制動が可能となります。これを身体で感じてもらって、どこがポイントなのかを実践し、それとコーナーへのアプローチをつなげていければよいな、と思っています。

 

 






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