【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『Garage 4413 高村嘉寿』編

2020/12/25 18:02

Garage 4413

Garage 4413

Z33/34専門チューナーとして、ZチャレンジやZエキスパートトロフィーに参戦する人々をバックアップ。一方で2輪はチームで全日本選手権に挑んでいる。そんな高村代表の思考回路は最新テクノロジーを生み出すものだった


ダメなところまで試して正解を得る
普通をやる限り現状は超えられない

16歳で2輪の免許を取得して、峠を走っていた高村さん。しかし、まもなく疑問を感じるようになる。そこで速くても褒められないが、サーキットでトロフィーとかもらってくると、「頑張ったね」となる。そこで高校3年生からは富士スピードウェイに通うようになる。
そのあと自動車整備の専門学校に入って、アルバイトしながら2輪のレース活動。卒業して日産のディーラーに入社してからも、レースは続け、27〜28歳の頃は全日本をかじるくらいにはなった。

しかし、ライダーはそこであきらめ、モータースポーツに携わるショップをやりたいと思うようになる。ディーラーの常連客の影響で、当時出たてのZ33を買い、2年間準備して、2006年にオープンしたのが、ガレージ4413だ。
 そして、折よくスタートしたZマスターやZチャレンジといったZワンメイクのチューニングカーレースは高村さんの転機となる。当初は2〜3台のサポートだったのが、10台以上になってしまったのだ。そこで『Zの店』というイメージは完全に定着する。

ZチャレンジとZエキスパートトロフィーでは多くのエントラントの現場サポート、ガレージメンテナンス、チューニングを担う。デモカーは塚本奈々美選手のドライブでつねにトップ争いを演じている。2輪は2013年に監督の山下さん、ライダーの星野知也選手と『シンクエッジ4413レーシング』を立ち上げ、全日本選手権にフルエントリー。現在はST1000クラスで、その活動ものチューニングやカスタマーのサポートに活かされている。

Zマスター、Zチャレンジで高村さんが感じたのは、2輪も4輪も同じで、正解はどんどん変わっていくということ。速く走らせるには、柔軟な頭が必要で、いろんな人の話を聞き、すべて試してみて、自身のものにする。そうした考えが同じで、ものを伝える言語も共通だったのが、当時も2輪で全日本を走っていた星野知也選手。全日本のメカニックを手伝うバーターで、Zのドライバーを務めてもらうことにした。
「ダメでもいいからトライしよう」は高村さんと星野選手の共通スタンス。タイムを出すには美味しいところだけじゃダメ。即効性のあることを求めがちだが、高村さんはダメなこともひととおり試す。バネレートなどもベストなところのもうひとつ先までやって確認する。真似をしている限りは前に出られない。だから、それを覆すために、突拍子もないLSDを組んだら、それを成立させるための足まわりのセットにすればいい。それが高村流のノウハウの蓄え方であり、最新テクノロジーなのである。

2輪の全日本を走る星野知也選手をドライバーに起用。共通の言語、考え方を持っていて、セッティングの方向を決めるのも早いからだという

2013年から2輪のチームを立ち上げた高村さん。監督は山下さんでライダーは星野選手。当初はGP2で現在はST1000。何のためかといえば、「自身の頭を錆びさせないため」という。BMWのオフィシャルチームという重圧、ランキング争い、8耐参戦(結果は優勝)の環境に身を置くことで、錆びないで済むのだという。「Zのチューニングやカスタマーのサポートにも活きている」とのことだ。
「負けたくないと思ったことはない。勝ちたいだけ。こいつには負けたくないと思った時点で、もうその人としか勝負していない。もっと先を見ようと思っている」という言葉も高村さんらしい格言。

取り付けのために必要なステーやパネルはつくり、キレイに付けるのが高村流。コクピットのメーター類からロールケージ、各種クーラー、足まわりパーツなど、それらは多岐にわたる

作業は丁寧で仕上がりがキレイだ。しかし、それは2輪の全日本では当たり前で、自身としては普通とのこと。それよりもガレージ4413としての最新テクノロジーは最大の武器としてのメンテナンスだという。距離管理は「スポーツ走行を何本走ったか?」という単位で、たとえば「ハブは富士を何千㎞は持つけれど、こうなったらこうしよう」みたいな話をする。ひとりひとりのカルテをつくっていて、オイルでも何でも交換時期が近づくと電話して「そろそろなんじゃない?」と聞く。写メで状態を確認することもある。スポーツ走行やレースを台なしにするような損失よりも遥かに安いもの。Zチャレンジやエキスパートトロフィーではサポート台数が20台前後になることも。その台数をトラブルなく走らせるという重圧と戦っている。
ABSの誤作動対策はZ33がデフのサイドフランジで、Z34はABSユニットの換装でクリアしている。LSDは1wayで、何年も前からイニシャルを高くして、効きもガッツリ。サスペンションは動かす方向のセットだという。ピッチングもロールもして、その中で抑える。「筑波の最終コーナーでアンダーステアが出たら、突っ込み過ぎたら、アクセルを叩けば戻ると、ドライバーには伝える。でも、そういうダンパーじゃないと、アンダーステアは速度が落ちるまで止まらないから、ドライバーは仕事ができない」と高村さん。それも試行錯誤のうえに辿り着いた答えなのだろう。

当初は少人数の常連客と飲み会セットプランを楽しみながら参戦していたZマスターやZチャレンジ。そのあと急激にサポート台数が増え、デモカーのZ33には星野選手を乗せることに。レブスピードのタイムアタックにも幾度となく参加。デモカーは途中からZ34が加わった

Zに関して、高村さんはナンバー付きにこだわっている。自身が峠で感じた疑問。それでサーキットに行くようになって本当によかったと思っている。峠や首都高、湾岸を走ったりしている若い人もいる。だけど、そういう人をサーキットに誘って、連れていくのが大事。そして、同じように「よかった」と思ってほしいのだ。高村さんがやりたかった『モータースポーツに携わるショップ』は、そういう底辺を広げるポジションなのだ。

ガレージ4413

神奈川県足柄上郡開成町吉田島770-4
TEL 0465-33-7700
http://www.garage4413.com/