【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『ENDLESS』編

2020/12/25 18:03

ENDLESS

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ブレーキテスター

屋内には轟音がこだまするテスター建屋。レース用摩材やローターの耐久テストから、市販品の開発テストまで24時間稼働し続けるのがこのテスター。このほかにも1/4サイズのテスターを備え、さらに市販前のテスト用として複数のテスト車両も用意している

ブレーキパッドに始まり、いまやキャリパー、サスペンションなどをサプライ。F1やWRCにもブレーキ関連パーツを供給し、2020年はル・マン24時間耐久レースで使用車両が優勝。世界で認められるモノづくりの匠がエンドレスだ


終わりなき開発、そのためのテストだからこそエンドレスが社名に

2021年に創業35周年を迎えるエンドレス。花里功会長と萩原正志社長ら数名でブレーキパッドメーカーを立ち上げたのが始まりだ。とにかく安全に、レースにも耐えられるブレーキパッドを供給するという目標に向かって、自社で試行錯誤しながらパッドの製作を始めた。
当初は専用の摩材を混ぜる機械もなく、一斗缶を改造して手づくりの撹拌機を製作し、摩材を混ぜていたという。創業の翌年には当時国内最高峰レースであるF3000でのテストを開始。そのパッドはあっという間にシェアを獲得していく。
その頃、マツダのル・マン24時間プロジェクトにパッドを供給していた。そのフランス・サルトサーキットで花里社長(当時)は驚愕した。
「プジョーのワークスチームが400㎞/hでユノディエールを疾走している。その姿を見たときに、勘で摩材開発をしてテストしている場合ではない」と思ったという。そこで創業3年目の1989年に実車と同じサイズのブレーキテスターを導入。なんとその価格は1億円だったという。

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自社製ダンパーはすべて専用ダンパー室で組み上げられる

オリジナルサスペンションもエンドレス社内で製作。ユーザーの使い方に合わせて1本ずつ仕様を変えて組み上げられる。オリジナルで特性の異なるスプリングもラインアップされ、細やかなセッティングも可能。30万円を切る価格でセミオーダー式の1台分フルセットを用意することが可能な人気商品

「創業3年で1億円の出費は相当の覚悟が必要だった」と花里会長は語るが、いまも昔も新たなものづくりに掛けるコストはいとわないのがエンドレスの基本姿勢。2020年には新たに建屋を建設し、中にはキャリパー切削用の5軸マシニングセンター(NC)を導入した。これまでキャリパーの切削加工は協力会社に依頼していて、今後も量産品は協力会社に切削してもらうが、自社で数千万円の投資をしてNCを導入することで、テスト用キャリパーを速やかに製作できるメリットが生まれる。通常であれば図面を協力会社に送り、そこから数週間後にでき上がったキャリパーをテストすることになるが、自社内にNCを導入したことで最速5時間でキャリパーを削り、すぐにテストをすることができる。新たなトライをどんどんできるようになれば、さらにいいものがつくれる。そのためのNC導入なのだ。

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キャリパーは手作業で組み立て、すべての漏れを検査

本社工場内でキャリパーも手作業で組み立てられる。丁寧に組み上げ、もちろん精密にトルク管理される。完成後はすべての製品を水槽に沈め、圧縮空気を使って微塵の漏れもないか検査されてから出荷される

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ユーザーサポートと車両販売の拠点アドバンスガレージもオープン

新車、中古車販売から、メンテナンス、チューニングまで幅広く対応できる店舗がアドバンスガレージ。サーキットデビューしたい人に向けた手厚いサポートなども行っている

それらのテストは社内の1/1テスターで行われる。実車のキャリパーとローターを使ってテストできるので、ほぼ実車と同じ結果が得られるのが魅力だが、ただ回して摩擦を測定するのではない。現在日本のレースで最もブレーキに厳しいのはスーパー耐久シリーズの富士24時間耐久レースだ。その舞台で、できれば、パッドもローターも無交換で完走できることを目標に開発を行っている。
そのためテスターには富士の走行データが入力され、それを24時間続けてテストされていく。たとえば、GT3規格のSTーXクラス用テストの場合、ホームストレートで300㎞/hまで加速し、一気に60㎞/hまで減速。コカ・コーラコーナーに向けて200㎞/hまで加速し、また140㎞/hまで減速……。といった具合にひたすら富士スピードウェイを再現したテストが行われる。
「とにかくテストが大切で、テストもエンドレスに行っています。もし、レース用パッドのテストが空けば、合間では市販品の在庫を抜き打ちでテストし、設計した性能になっているか確認しています」という。
積極的なレース活動もテストの一環である。そのためにN1耐久、GT選手権、スーパーGT、スーパー耐久への自社チームでの参戦。GAZOO Racing86/BRZレースでのサポートなどを行っている。

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エンドレスミュージアム近日オープン!!「乗れる」がコンセプトの広大な博物館が完成へ

いまとなっては旧車だが、時代を牽引してきたクルマにはそれぞれ凄いところがある。そんな旧いクルマたちを安心して楽しんでもらいたい。とエンドレスはそれらの旧車をレストアし、同時にいまから安心して乗れるようにブレーキシステムの開発も行ってきた。そんなレストアした旧車たちを一堂に並べ、助手席ではあるが、ドライブを楽しめるという新たなコンセプトのミュージアムをオープンする。
場所はエンドレス本社から10分ほどの中部縦貫道・佐久穂インター近く。広大な敷地内にはミュージアムとレーシングガレージを併設。予約しておけばクラシックカーの助手席で走りを体験できる。

レースもテスト機材導入も、すべては開発への、未来への投資だと花里会長は語る。
「ものづくりには魂を入れないといけない。そのときにお金儲けを考えていたら本当にいいものはできない。やる気は当たり前、命賭けて開発するのも当たり前。その思いが伝わった製品ができれば、それがユーザーに伝わる。それが伝われば、お金はあとからついてくると思っている。」
2021年の年頭にはさらなる進化を遂げたブレーキキャリパーをお披露目する予定。そのキャリパーを見てもらい、エンドレスがどれだけ進化しているかを見てほしいと花里会長はいう。
「完璧を目指す。完璧というのはないのかもしれない。でも、そのときにできる完璧を目指す。たとえば、100点満点の目標を達成したら、その瞬間にその100点は80点になる。また100点を目指す開発が始まる。これが本当の“エンドレス”ということです」

エンドレスアドバンス

TEL 0267-67-0535
https://www.endless-sport.co.jp/






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