意外な(?)チューナーによるNCロードスターの新提案

2021/05/26 12:56

意外な(?)チューナーによるNCロードスターの新提案

 

「これからのベース車選びにも最適」と、他車種チューナーも薦める理由とは?

 

Photos/稲田浩章 Text/勝森勇夫

 

 

4月24日の岡山国際サーキットで、4台のNCロードスターを取材。持ち込んだチューナーは、S2000など他車種の印象が強かったりもする。つくり込みが異なる4台。「リーズナブル」、「走って楽しい」、「速いタイムを出せるポテンシャルがある」など、NCを選ぶのに最適な理由や、それぞれのコンセプト、仕様内容に注目したい。

 

 

独自の提案を見せる4台。左からCSO、カープロデュースアルテックス、ナイトー自動車販売、アライズモータースポーツ

 

 

NCロードスターは、西日本のチューナー(CS0 、カープロデュースアルテックス、ナイトー自動車販売、アライズモータースポーツ)が、これからサーキット走行やチューニングを楽しもうと考えている人に「イチ押し!」と声を揃えるモデルだ。

推奨する一番の理由は、車両の価格が手頃なこと。スポーツモデルの中古車が軒並み高騰している中、この本格的な2シーターオープンスポーツは、まだ相場が低め。低年式であれば、50万円程度で見つかることもある、超狙い目モデルなのだ。

 

しかもNCロードスターは、チューニング費用が思いのほか安く済む。先代のNAやNBと異なり、エンジンが2.0ℓのNCは、ノーマルでも国際格式の大きなサーキットをストレスなく楽しめる性能がある。足まわりやブレーキ、デフやタイヤ&ホイールといった、文字通り走りのための基本メニューをこなすだけでサーキットデビューができるのだ。

 

スポーツ走行を楽しむにあたって、多くのクルマが必須となる冷却装置の強化も、「必要なし」、もしくは「やってもオイルクーラーだけでOK」というのが、大半のチューナーの意見。チューニングには、同じマツダ車のRX-8や、同じFRモデルとなるS2000など、他車の純正パーツを流用してコストダウンが図れるところも、このクルマのうれしい特徴だ。

 

話を伺ったチューナーは左からCSOの小原弘晃さん、カープロデュースアルテックスの松野卓也さん、ナイトー自動車販売の内藤頼康さん。一番右のアライズモータースポーツは、オーナーのタンク!さんと、チューナーの藤木輝さん

 

 

また、ライトウエイトスポーツのNCロードスターは、メンテナンスやランニングコストも抑えられる。重量が軽いので、タイヤのブレーキの消耗はおだやかだし、パワーを欲張るクルマではないので、エンジンを壊すリスクも低い。ちなみにNCロードスターが搭載するMZR型(2.0ℓ直列4気筒DOHC)は、今も新品が30万円ほどで手に入るという心強い情報もある。なので、過走行車も安心して走り込んで大丈夫だ。

 

各チューナーの手がけたデモカーやオーナーカーを見ても、チューニングのセオリーはなく、仕様は様々。サーキット走行やチューニングを、周囲を気にせずマイペースで楽しめるところも、NCロードスターの大きな魅力と言えるだろう。

 

 

次ページから各車の細部を紹介

 

CSO

 

CSO

兵庫県神戸市西区大津和3-6-2 TEL078-976-8821 http://cso.ico.bz/

 

 

S2000のスペシャリティショップとして名を馳せるCSO(クリエーティブサービスオハラ)。小原弘晃代表は、ベース車両の高騰に悩むFRスポーツファンへの救済手段として、NCロードスターのチューニングをスタートさせた。

 

 

「NCロードスターは、サーキット入門や、スキルアップに最適なカジュアルなFRスポーツ。なので、チューニングは、そんなキャラクターを活かす方向で。あくまでも肩の力を抜いて走りを楽しめるように仕上げることを、ウチでは推奨しています」。

 

そんな小原代表の言葉通り、デモカーのチューニングはいたってライトだ。ベース車両は最もリーズナブルな前期型をチョイス。エンジンは完全ノーマルで、フットワークチューンは、前オーナーによって装着されていたパーツを活かすカタチで手を加えているところも興味深い。

 

 

足まわりは、ベース車両に装着されていたスピリットの車高調キットをベースにリセッティング。車高は高めに調整、スプリングは荷重移動がしやすいサスペンションプラスの低反発タイプに交換。バネレートはフロントが13㎏/㎜、リアは10㎏/㎜だ。ブレーキはパッドのみ制動屋のRM551+で強化している。

 

「足まわりは、バネやアライメントのセッティングを変えるだけでも、走りを高めることは可能です。すでにチューニングされているなら、一からやり直さなくても大丈夫。その分、メンテナンスにかけるのが賢い」と小原代表。

 

 

 

この日、CSOのデモカーが岡山国際サーキットでマークしたベストタイムは1分48秒6。自己ベストはさらに速く1分47秒台だ。エンジンがノーマルで、最高速が175㎞/h程度であることを考えれば、ほぼコーナリングの速さで叩き出しているタイム。論理的かつ精密なCSOのフットワークセッティングのレベルの高さが窺える。

 

 

完全なノーマルとなるエンジンの走行距離は10万5000キロを突破!マフラーはリアピースのみフジツボ製に交換されている。

 

 

 

ノガミプロジェクトのオイルクーラーを装着。冷却系チューンはコレのみで、ラジエーターはノーマルだ。

 

 

アライメントはキャンバーがフロント4度、リア3度。トーは前後とも±0。タイヤはトータルバランスに優れたA052をセット。適度なロールで、しっかりタイヤをつぶして曲がるセッティング。

 

 

 

 

<CSO NCEC SPEC>

■NCロードスター(前期型)■フジツボ マフラー ■ノガミプロジェクト オイルクーラー ■スピリット車高調キット+サスペンションプラスUC01スプリング(F:13㎏/㎜R:10㎏/㎜)、RX-8用ラテラルロッド、フロントピロブッシュ ■制動屋 RM551+ブレーキパッド(F&R) ■ORCライトクラッチ、クスコ1way L.S.D. ■ADVAN A052(F&R:255/40R17) ■VOLK RACING ZE40(F&R:17×9.5J 63) ■マツダスピード フロントバンパー/サイドステップ/リアバンパー、odula車検対応GTウイング ■エスケレート バケットシート、サベルルト シートベルト ナルディクラシック

 

 

■CSO 兵庫県神戸市西区大津和3-6-2 TEL078-976-8821 http://cso.ico.bz/


 

CAR PRODUCE ALTEX

 

カープロデュース アルテックス

岡山県岡山市東区東平島1171-3 TEL086-201-5021 http://altex001.com/

 

 

カープロデュースアルテックスのデモカーの一番の特徴は、他車の純正パーツを最大限に活用した、リーズナブルかつ手堅いクルマづくりだ。

 

まずフットワークは、NCロードスターチューンの定番となる、RX-8の純正アームを用いて強化。ロール剛性を高め、高速コーナーでのスタビリティを向上させている。このアームの流用チューンでは、リアのナックルアームもRX-8用に交換しているのがポイント。他のアームに比べると取り付け難度は高いが、「サスペンションジオメトリーに有効に作用し、トラクションが確実に高まる」と松野拓也代表はその機能に太鼓判を押す。ブレーキは、フロントをホンダのインテグラ(DC5)の純正ブレンボで、リアはRX8-用の純正システムで強化する。

 

 

サスはZEALベースのオリジナル仕様。アームはRX-8の純正に交換することでリーズナブルに強化できる。フロントロアアームはキャンバー調整を可能にするオリジナルの偏心ピロ仕様だ。デモカーはリアのナックルアームもRX-8純正に交換済み。バックプレートを装備するリアのブレーキシステムがその証だ。アライメントはキャンバーが前後3.5度。トーはフロントが±0、リアはINに0.5㎜。

 

 

 

エンジン本体はカムのみ交換。吸排気の効率化とエピファンによる現車合わせセッティングで、8000rpmまでスムーズに回るエンジンに仕上げる。

 

エキマニとキャタライザーはHKSでチューン。排気系は高回転域での抜けを重視したセッティング。

 

エンジン性能を生かし切るためにチューニングされたミッションは、純正5速にボンゴ用のファイナルギア(4.77)を組み合わせたフルクロス仕様。ちなみにミッションのギア比は、純正6速ミッションにRX-8のギアを組み合わせてクロス化させる方法もあるとのこと。さらに駆動系では、S2000の純正トルセンL.S.D.の流用も可能。「デモカーは機械式ですが、快適性重視の人には、そちらもオススメ。もちろん出費も抑えられます」と松野代表は話す。

 

 

ブレーキは、フロントをホンダのインテグラ(DC5)の純正ブレンボで、リアはRX8-用の純正システムで強化している。オートプロデュースアルテックスのデモカーは、財布にやさしい流用技の宝庫。お手本にしないテはない。

 

 

<カープロデュース アルテックスNECE SPEC>

 

■NCロードスター(中期型) ■エピファンECU ■HKSエキマニ/メタルキャタライザー ■ZEALアルテックスSPEC車高調+スイフトスプリング(F&R 12㎏/㎜)、RX-8用アーム、アルテックスオリジナルピロ ■インテグラDC5用ブレンボキャリパー+324φローター(F)、 RX-8用リアブレーキシステム、IDI D700ブレーキパッド(F&R) ■ORC強化クラッチ/フライホイール、クスコRS 2way L.S.D. (4.77ファイナル)■ADVAN A052(F&R:245/40R17) ■VOLK RACING CE28(F&R:17×9J 45)■ガレージベリー フロントバンパー、ボルテックス GTウイング ■ブリッド ジータⅣ、タカタシートベルト

 

 

■カープロデュース アルテックス 岡山県岡山市東区東平島1171-3 TEL086-201-5021 http://altex001.com/

 

 


 

NAITO JIDOUSHA HANBAI

ナイトー自動車販売 広島県呉市郷原町3766-1  TEL 0823-77-0706  http://www.naito-park.net/

 

シルビアやランエボをベースとしたハイパワーチューニングのイメージが強いナイトー自動車販売。実はロードスターのチューニングにもチカラを入れており、NCベースのデモカーは、この日、岡山国際サーキットに持ち込んだ2.5ℓ仕様のほか、マツ耐をターゲットとする2.0ℓ仕様も開発している。

 

エンジンはアテンザ用のMZR型に換装した2.5ℓ仕様。Max.196ps-34kgf/mのパワーとトルクを発生する。

 

 

 

パワー的には、2.0ℓ仕様(ハイカム+排気+ECU現車合わせ)の170psに対して、アテンザ用のエンジンに換装した2.5ℓ仕様は200ps弱と、かなりのアドバンテージだ。内藤頼康代表は2.5ℓ仕様の魅力を、「2.0ℓよりも常に1つ上のギアで走れます。高回転まで回して乗るエンジンではないので、耐久性という面でも有利です」と語る。NCになって、大柄になったと言われるボディだが、正確にはNBと比べ10〜20キロ程度の重量増。これに300kg以上車重が重いアテンザ用のパワーユニットを搭載するのだから、サーキットでも余裕シャクシャクなのもうなずける。低速からチカラがあって扱いやすい2.5ℓ仕様は、サーキットリターン組のシニア層にも人気の高いスペックだ。

 

 

 

 

ビッグパワーをフルに活用すべく、タイヤは255幅を、オーバーフェンダーの力を借りてセット。6ポットキャリパーを奢るブレーキは、減速ではなく、スピードのコントロールを主目的としたチューニングだ。ストレートでのトップスピードはもちろん、コーナーへの飛び込み速度もバツグンに速いナイトー自動車販売のNCロードスター。この日唯一、タイムを1分47秒に突入させた。

 

 

 

 

サスはレーシングギアのHSダンパー+ KYBスプリングの組み合わせ。バネレートはTSタカタサーキット合わせとなるF:14㎏/㎜、R:12㎏/㎜だ。

 

エンドレスの6ポットキャリパーを起用するフロントのブレーキチューンは、ポット数を増やすことで、パッドのローターへの当たりを均一にし、コントロール性を高めるのが最大の狙い。パッドもコントロール性重視のMX72をセットしている。

 

タイヤはA052(255幅)をセット。アライメントは、キャンバーはフロントが4度、リアが3度。トーはリアのみINに6㎜で調整。タイヤは細めのセッティング(215or225)でのタイムアタックも計画中だ。

 

 

 

<ナイトー自動車販売 NCEC SPEC>

 

■NCロードスター(前期型) ■アテンザMZR型2.5ℓエンジン換装 ■純正書き換えECU ■サード エキマニ/キャタライザー、オリジナルチタンマフラー+柿本マフラー ■レーシングギア車高調+KYBスプリング(F:14㎏/㎜ R:12㎏/㎜)、アルテックス フロントキャンバーアーム、クスコ スタビライザー ■エンドレス 6ポット(チビ6)キャリパー(F)/MX72ブレーキパッド(F&R) ■ORCクラッチ/フライホイール、クスコ タイプRS L.S.D.(ファイナル4.4) ■ADVAN A052(F&R:255/40R17) ■ENKEI PF01(F&R:17×9J 48) ■オリジナルボンネット、インテグラル神戸  Jet,sマスタースペック フロントワイドフェンダー、トヨシマクラフト サイドステップ、ノガミプロジェクト FRPハードトップ、サード GTウイング ■ブリッド ジータⅣ、MOMOステアリング

 

 

■ナイトー自動車販売 広島県呉市郷原町3766-1  TEL 0823-77-0706  http://www.naito-park.net/

 


 

arise motor sports

 

アライズモータースポーツ 兵庫県姫路市広畑区西夢前台6-5 TEL079-228-2925  http://www.arise-sports.com/

 

 

アライズモータースポーツが手がけたこのNCロードスターは、デモカーではなくカスタマーカー。「愛車で、全国の様々なサーキットを走りたい」というオーナーの思いを受けてのクルマづくり。サーキット走行を安全に楽しめ、遠征のためのロングドライブも快適にこなせることをテーマにチューニングされている。

 

 

「タイムを意識したこともありましたが、今は楽しさ重視の仕様です」とはオーナーのタンク!さん。聞けば、以前装着していたGTウイングを、思い切って取り外したそうだ。理由は、GTウイングを付けて以降アンダーステアが強くなり、ロードスターらしい走りの楽しさがすっかり影を潜めてしまったため。さらに最近、ハンドリングやコーナリングのさらなる軽快感を求めて、タイヤ幅を245から当初の215へと戻すダウンサイジングを決行。完全に、タイムを意識したチューニングを断ち切った。

タイヤはA052の215幅。以前の245のときより走りやすく、タイムもアップした。

 

 

そしてこの日は、現仕様での初のサーキットラン。タンク!さんは、走行1本目のインラップからクルマの動きがグンと軽快になったことを実感する。「ロードスターの楽しさはやっぱりコレでしょ、という感じ」。変貌を遂げた走りのフィーリングを、嬉しそうにそう話す。しかも驚いたことに、ラップタイムは以前よりも1秒近く更新。自己ベストとなる1分48秒6をマークしたのだ。 ロードスターの持ち味である「人車一体」の走りができたからこそのタイムアップ。楽しさ重視の人にも、タイム狙いの人にも参考になるNCだ。

 

エンジンはカムのみノガミプロジェクトのハイカムに交換。中・高回域のパワーアップを図る。ECUはアライズモータースポーツによる綿密な現車合わせセッティング。

 

 

 

サスキットはアライズオリジナル。スイフト製となるスプリングはフロントが14㎏/㎜、リアは10㎏/㎜だ。スタビライザーとブレーキシステムは前後ともにRX-8の純正パーツで強化。ブレーキパッドは制動屋のRM551+をセット。

 

 

 

排気系はエキマニとキャタライザーがマキシマム、マフラーは軽量なR-racingのフルチタン。マフラーのメインパイプの太さは60φで中低速トルクを意識したセッティングだ。

 

 

目線にもしっかりこだわってセッティングしたシート。クルマとの一体感を得るためのポジションづくりにも抜かりなし。

 

 

 

ハンドリングの向上を期して、GTウイングをキャンセル。クルマの回頭性が大幅に高まった。

 

 

<アライズモータースポーツ NCEC SPEC>

■NCロードスター(後期NC3) ■ノガミプロジェクト ハイカム ■アライズ純正書き換えECU ■マキシマム エキマニ/キャタライザー、R-racingフルチタンマフラー ■アライズ車高調+スイフトスプリング(F:14㎏/㎜R:10㎏/㎜)、RX-8純正スタビライザー ■RX-8純正ブレーキシステム(F&R)+制動屋RM551+ブレーキパッド(F&R) ■カーツ1.5way L.S.D.(ファイナル4.3) ■ADVAN A052(F&R: 215/45R17) ■ADVAN RSⅡ(F&R:17×8J 37) ■ブリッド ジータⅣ 、ナルディ ステアリング

 

 

 

■アライズモータースポーツ 兵庫県姫路市広畑区西夢前台6-5 TEL079-228-2925  http://www.arise-sports.com/