大湯都史樹選手が愛車S2000にチョイスした制動屋のブレーキアイテムを紹介

2023/03/27 13:28

大湯都史樹選手が愛車S2000にチョイスしたブレーキアイテムとは

 

 

眩いS2000は、レーシングドライバー大湯都史樹選手の愛車だ。大湯選手はプライベートでもモータースポーツを楽しんでいる。ベースはAP1型で、イジっていない箇所を探すのが難しいほど、くまなく手が入る。

 

そのひとつ、大湯選手がブレーキ系のチューニングに選んだのが制動屋のキットである。「これまでのレース活動でも、いろいろなブレーキを試す機会がありました。制動屋は鈴鹿を拠点にするメーカー、パッドのブレーキタッチなどにレースの本場だからこそできるワザを感じた。S2000のオーナーにも制動屋のキットを使っている方が、多くいると思います。そういうことから決めました」(大湯選手)。

 

フロントに4POTキャリパーキットを、リアにはインチアップローターキットを組み、最近では筑波サーキットのタイムを目指すイベントAttack Tsukuba に参加し、ブレーキの性能を確かめたばかりだ。

 

 

大湯選手が愛車に組む制動屋のS2000用ブレーキキット。フロントは2Pキャリパーキット。34万6500円(税込み)。リアはインチアップローターキット。19万2500円(税込み)

 


大湯選手は先にリアをインチアップした

大湯選手が愛車を託す先はASM YOKOHAMA。屈指のレカロシート専門店として知られ、S2000のチューニング&メンテナスに強い顔も持ち合わせる。筑波をはじめ、各地のサーキットでS2000を走らせ、タイムも刻んでいる。

 

大湯選手の愛車を担当するのは写真の阿部峻也さんだ。大湯選手がブレーキを強化したタイミングは前後同時ではなく、初めにリア、時期を置いてフロントの順に進めている。

 

「大湯選手が制動屋のブレーキキットを使い始めたのは、リアが半年ほど前。フロントが今年に入ってからです。それとは別に、当社では制動屋のリアインチアップキットを多く、カスタマーの愛車に取り付けています。フロントはノーマルのブレーキシステムそのまま、リアのみキットの大径ローターに換えています。オススメしている、実績のあるメニューです。なぜならS2000のノーマルブレーキシステムに、新車当時ならではの特徴があるからです(後述)」(ASM 阿部さん)

 

 


S2000純正ブレーキの弱点

 

 

ASMでのS2000ブレーキ強化の第一歩は、リアブレーキローターのインチアップ。阿部さんが理由を話してくれた。

 

「スポーツ走行のブレーキングでは、じつは駆動輪のリア側があまり効いていないんです。S2000はメーカーとして久々のFR。新車当時のホンダはFFが主流。その影響かは定かでないですが、傾向としてFF的な仕様のブレーキバランスになっている。そこでインチアップローターで、リアの効きを補うわけです」

 

リアタイヤがハイスピードから十分に止まらない、となればコーナーもスムーズに曲がれない。 さらにブレーキローターの構造もリアはベンチレーテッドではなくソリッドのためか、仕事量が少ない割に熱が溜まる。他車ではめったにないくらい、熱くなるそうだ。以上の解決策が、リアブレーキローターのインチアップである。

 

フロントはサーキット走行の連続や、年月の経過による劣化から、制動力に影響する症状が現れる。阿部さんが教えてくれた。

 

S2000のノーマルフロントキャリパーは、1ピストンのフローティング式(片押し式)。そのための仕組み、キャリパーを横方向にスライドさせる摺動部がある。

 

ここの動きが渋くなると、キャリパーのボディがスライドできなくなる。キャリパーの動きが止まった状態でピストンだけがボディから油圧によって押し出されるから、その作用もあってキャリパー全体がホイール側に、やや斜めを向く(下記の写真参照)。結果として内側(車両側)のパッドはローターに一部だけが当たり、外側(ホイール側)のパッドも機能しにくくなる。制動力が落ちるわけだ。リアも同じ方式なので、やはり症状が起こるという。ノーマルの弱点だ。

 

ノーマルフロントキャリパーの構成。時計まわりにキャリパーボディ、キャリパーをナックルに固定するブラケット、キャリパーボディをブラケットに対して摺動させるスライドピン。これは大湯選手が使って傷んだもの

 

キャリパーとブラケットの関係。本来はブラケットにブレーキパッドを入れてからキャリパーボディをかぶせてボルトで留める。ブラケットから延びるステーは、ナックル(車両側)への固定用

 

スライドピンはブラケット側のピン穴に収まる。摺動が渋くなるとキャリパーの動きが引っ掛かって止まり、ガタも出る。症状の進行はキャリパーオーバーホールでは復活が難しく、ASMではASSY交換を推奨

 

誇張した症状のイメージ。キャリパーがスライドできなくなると、ピストンの作用もあってキャリパー全体が外側へ、斜めを向き始める。内側のパッドは傾いた状態でローター押し付けられ、外側はローターから離れ、制動力が落ちる。ノーマルキャリパーの弱点だ。

 


リアインチアップでディスク径がフロントを追い越す!?

 

そしてS2000のノーマルブレーキシステムについてだ。以下はホイールが16インチのAP1、ホイールが17インチのAP2ともに共通している。

 

フロントは、キャリパーが1ピストンのフローティング式(片押し式)。ローターがベンチレーテッドディスクでφ300mm。リアは、やはりキャリパーが1ピストンのフローティング式。ローターがソリッドディスクでφ282mm。

 

制動屋のリアインチアップキットは、ローター径がφ323mmで厚みが16mmのベンチレーテッド。ということはリアローターのみのインチアップはフロントローターより大きくなり、むしろリアが効き過ぎないのか? 疑問だ!?

 

「交換後もパッドの面積と当たる幅はフロント側より狭いため、効きが上回ることはなく、シリンダー径の比率からもフロントを超えることはないです。それで、前後バランスが合うんです。お客さまからは安定した姿勢で止まりやすくなった、との声を多くいただいています」(ASM 阿部さん)。

ASMのアドバイスとして制動屋のリアインチアップキット装着では、17インチ以上のホイールが必要だ。AP2の純正17インチはOK。16インチはAP1純正含め不可。大湯選手のホイールはTE37 SAGA S-plus 17×9.0J 61( ASM限定特注サイズ)

 


さらなるリアインチアップキットの特徴

インチアップキットは2ピース式φ323mmローター、キャリパーを大径ローター分オフセットさせる削り出しのブラケット、専用ブレーキパッドなどで構成

 

制動屋のリアインチアップ装着には、ほかにもいくつかのメリットがある。ASMが注目したのは、まずベルハウジングとローター部がセパレートでつくられる2ピース式の仕組みだ。S2000はFR、大事な駆動輪のハブ側へ、ブレーキまわりの熱が伝わることを抑えられる。

 

そして、パーキングブレーキへの対応である。S2000の場合、小ぶりなリアキャリパーにサイドブレーキの機構まで内蔵されている。大径かつ厚みが増すベンチレーテッドのディスクになっても純正キャリパーが活かせ、ノーマル同様の感覚でサイドブレーキがかけられる。「大事なところです」と阿部さん。

 

キット全体として、ローターの大径化に合わせてキャリパーを外周側へ移動させるブラケットの仕上がり等々、ASMは細部の品質も買っている。補修用ローターのコストまで含め、「完成されている」と評価する。

ローターはノーマルのソリッドに対して、排熱用のベーンがつく厚いベンチレーテッドディスク。放熱性の改善が期待できる

ローターはハブ側のベルハウジングとローターが別パーツでつくられる2ピース式。ローターが摩耗した場合は、単品交換が行える。ASMには補修して愛用を続けるカスタマーがいる

頑丈に映る、専用ブラケットを介して取り付けられた純正リアキャリパー。サイドブレーキがノーマル同様の掛かりを保てるのもASMが挙げる制動屋のキットのよさ


フロントには2ピースブレーキキャリパーを装着

クルマをもっと短時間で減速させたい。そのためにフロントの制動力を高める。大湯選手がフロントに組んだのが制動屋の2ピースブレーキキャリパーキット。ノーマルのフローティング式キャリパーとは、まるきりつくりが異なる。

 

キャリパー自体はスライドせず、車両側に専用ブラケットでがっちり固定されている。キャリパーには内側(車両側)にふたつ、外側(ホイール側)にふたつ、計四つのピストンがローターを挟み、対向して組まれている。いわゆる4POTキャリパーだ。

 

キャリパーのボディはアルミ製、ローターは純正より23mm大径のφ323で厚みが30mm。魅了されるスペックである。ブレーキが掛かるレスポンス、剛性あるタッチなど、ストッピングパワーを確実に強化できる。交換後もブレーキペダルのストローク感は、ノーマル同等という。

 

パッドをレスポンスよく、強くローターへ押し付ける。見るからに効きそうなシステムだ。ローターには効率的な排熱が見込めるベーンが設けられ、表面にはスリット加工も施される

 

キャリパーのボディはアルミ鋳造製で構造が2ピース式。切削や表面の処理、彫り込まれたネーミングなど、仕上げの精度が窺える。ブレーキパッドは専用品が付属

 

キャリパーを車両に固定する削り出しのブラケット。そのデキには剛性が感じられる。キャリパーの性能を引き出す、無くてはならない隠れた存在だ

 

フロント用2ピースキャリパーキットもホイールは17インチ以上を履く必要がある。キャリパーそのものも大きく、購入時はスポークとの位置関係など、ホイールの形状を検討したい

 


大湯選手が語る走行インプレション!

 

「初めに行ったリアインチアップの効果は、ブレーキを気持ちよく、ど~んと、バイト感よく踏める。リアがしっかり効いて、前後の姿勢が安定した状態で減速できるようになりました。

 

ただ僕はもっとクルマを早く止めるため、フロントを効かせたくなった。4POTキャリパーと大径ローターに換えたら若干フロントの効きが上回り、よりフロントが荷重を受けられるようになりました。感じとして筑波の走行では制動距離が10mから15mは変わりました。制動距離が短くなったのは、間違いありません。

 

ただ、筑波で使ったブレーキパッドはサーキット志向。もちろんキットとの相性はいいですが、街乗りだと初期からの効きが強いかもしれません。そこはストリート用もあって、そっちの方が快適に乗れる印象です」

 

大湯選手が実戦、日常の両面でのインプッションを語ってくれた。いま以上にS2000が乗りこなせ、スポーツ走行を満喫できる。制動屋のキットが叶えるだろう。

 

 

 

 

■制動屋  TEL059-373-5871  https://seido-ya.com/

 

■取材協力/ASM  神奈川県横浜市中区新山下2-4-7 TEL045-629-0905 

https://autobacs-asm.com/

 

 






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