橋本洋平が全開インプレ『2021 年ワークスチューニンググループ合同試乗会』
11月15日にツインリンクもてぎ南コースにて開催された『2021 年ワークスチューニンググループ合同試乗会』。TRD/NISMO/MUGEN/STI各社がそれぞれ2台のデモカーを用意。ジャーナリストの橋本洋平の試乗レポートをお送りする。
Photos/高橋 学 試乗インプレText/橋本洋平
TRD
■ トヨタカスタマイジング&ディベロップメント TEL050-3161-2121 https://www.trdparts.jp/
TRD Yaris ラリー仕様(1.5L FF)TRDテスト車両
TRD-CUP 指定サスペンションを装着した、Yaris のラリー仕様地方選手権から全日本レベルまでを広くカバーする仕様。グラベルからターマックまでを1セットでカバーできるセッティングが特徴で、ラリーに参加するための部品を装着する。
試乗インプレッション
TRDラリーチャレンジと全日本ラリーとの間を橋渡ししようと開発されたRallycup Specとなるこの車両は、2名乗車となるロールケージやアンダーガード、そして1wayの機械式L.S.D.を装備。また、グラベルからターマックまでひとつのダンパーでカバーしようというCUP-SPEC DAMPERがポイントとなる。
フロント、リア共に30N/mmのスプリングと、前後32段調整のショックが組み合わされる車高調整式となるこの足は、ストロークがかなり豊かなところが特徴的。ロードホールディング重視ではあるが、その動きの過程は実にリニアに仕上がっており、手の内に収めやすい。リアにスペアタイヤを2本搭載するという本番さながらの状態であったが、リアの追従性は良く纏まっていた。
TRD Hilux オフロードレース仕様
2019 年のTatts FINKE DESART RACEに参戦しクラス優勝を飾った車両。徹底した軽量化とオリジナル車両からショートホイールベース化、更にリヤリーフリジットサスペンションを4 リンク化し、デザートレース用に最適化している。
今回はTRDオフロードアドバイザーであるプロドライバーの塙郁夫選手の横に同乗した
同乗試乗インプレッション
2019年にオーストラリアで開催されたTATTS FINKE DESERT RACEにおいて、EX4クラスで優勝したこのハイラックスは、日本で売っているダブルキャブ仕様ではなく、タイ仕様のSmart CABをベースに製作された一台だ。
2.8Lディーゼルターボは、タービンやインジェクターを変更することで260ps、700Nmまでパワーアップ。キャビン骨格以外をCFRP化。駆動力配分を40対60に変更してセンターデフにはトルセンL.S.D.を装備。足まわいは超ロングストロークでダブルスプリングの車高調をセットする。
今回はTRDオフロードアドバイザーであるプロドライバーの塙郁夫選手の横に同乗した。走りは左足ブレーキを駆使してクルマをくるりと旋回させ、アクセルオンではドリフト状態で立ち上がる走りを展開。ATのダイレクトなシフトアップと、鬼トルクによる豪快なフル加速が印象的だった。
NISMO
■ ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル TEL 0120-846-423 https://www.nismo.co.jp/
スカイライン史上最強の400ps オーバーエンジンを搭載する 『400R』。ブースト圧と点火時期のチューニングを行うことにより、全回転域での伸びの良いリニアな加速感を実現した『スポーツリセッティングTYPE-2』とスポーツチタンマフラーの装着により、中低速域でのアクセルレスポンス向上により、発進時や加速時にスムーズでスポーティーな加速感を楽しめる。新商品のフロントスポイラーの装着により、空力特性の向上とスポーティーなスタイルを実現。
試乗インプレッション
今回の400Rは3つの変更が施されている。ひとつ目はスポーツリセッティングがタイプ2に進化したことがまずはポイントだ。タイプ1ではスピードリミッター解除のみだったが、タイプ2では低中速域におけるブーストアップ、そして高速側では点火時期の変更を行っている。全域でのフラットトルクが自慢だというが果たしてどうか?
二つ目の変更はスポーツチタンマフラーが奢られていることだ。純正比で約半分の重量となったこと、そしてチタンマフラーならではの音色が興味深い。
三つ目のポイントは空力に拘ったというフロントスポイラーである。これは純正のカーボンエクステリアパッケージに含まれているリアスポイラーと共に前後バランスを煮詰めたという製品。センター部分は空気を圧縮してアンダー部に素早く流すことを考えた一方で、両サイドは張り出しを持たせ、ダウンフォースを生みつつ、サイドの渦を消す整流を目的とした跳ね上げが与えられるなど、かなり凝った形状が面白い。Cd値を悪化させることなくダウンフォースを増しているという。
走ればトルクの立ち上がりは鋭く、中間加速はノーマル状態とは明らかに違うことが全開加速を一回しただけでも理解できる! 高回転へ向けた伸び感もなかなかだ。そこに爽快なエキゾーストノートと、リアまわりが軽くなったことによるリアの追従性が向上していることが理解できる。
フロントスポイラーのおかげもあってか、コーナー進入側もすこぶる素直に頭が入って行くから楽しくて仕方ない。LSDが無いのが残念だが、そこさえクリアすればドリフトもグリップも共に楽しめそうな一台だ。
オーラ NISMO ニスモパーツ装着車
よりスポーティーな外観に仕上げるエクステリアパーツとシックでスポーティーな印象のレッドがアクセントとなったインテリアパーツを装着。軽量高剛性な鍛造アルミロードホイール LM GT4S(開発中)を装着し、ハンドリング性能向上。また開発中のフロントリップスポイラーとリアガーニースポイラーも装着し、空力特性の向上を実現。
試乗インプレッション
ノートも400Rと同様の考えで製作されたフロント&リアスポイラーがセットされる。特に目を引くのはリアスポイラーで、跳ね上げ具合はかなりのものだが、これでもCd値は悪化せずにダウンフォースを得られているという。
また、レイズと共同開発のホイールも装着されるが、タイヤはノーマルのミシュランPS4となっている。走ればステアリングの切りはじめから即座に旋回。切り込み応答も深い領域までリニアで、クルマが小さくなったかのようなフィールがある。けれども、フロントもリアもナーバスな動きは皆無で、ニュートラルに旋回。四輪の接地感も高く、上質な乗り味を展開していた。今後はLSDの開発も考えているとのこと。それとe-POWERの組み合わせが楽しみだ。
MUGEN
■ M-TEC TEL048-462-3131 http://www.mugen-power.com/
MUGEN CIVIC
スタイリングや走行性能といった車の本質にこだわるCIVIC ユーザーに向け、無限ならではのスポーツティ感を高めるパーツをラインアップ。試乗車はエアロパーツに加え、スポーツエキゾーストシステムや18 インチ鍛造アルミホイール「FS10」を装着。
試乗インプレッション
ダイナミック&スポーツをコンセプトとしたこのシビックは、全周に覆われたエアロパーツはもちろん、1輪で4kgも軽量化した鍛造アルミホイール、そして前後に備えられたパフォーマンスダンパーがポイントとなる。
MUGEN VEZEL
無限は「Sports Style」をコンセプトに、スポーティーかつプレミア感を演出するパーツをラインアップ。e:HEV 車専用設定のスポーツサイレンサーや躍動感あふれる新デザインの18 インチアルミホイール「CU10」を装着。
試乗インプレッション
ヘッドライト下に加えられたフロントロアラインデカールや、ボディ同色のグリルにアクセントを加えてくれるフロントグリルガーニッシュによって、精悍なマスクに生まれ変わったヴェゼル。
このほか、フロント、サイド、リア(ここは二段!)にエアロを備え、かなりアグレッシブな印象を生み出したところが面白い。ホイールは鋳造ながら1本あたり2.5kg軽量化。スポーツサイレンサーの装備も行っている。
走ればコチラもまた軽快さは際立っており、ややスポーティなタイヤに変更されていたこともあってグイグイ旋回。スポーツマフラーが生み出す適度な音量の爽快なサウンドも車両にマッチしている感覚があった。草食系のヴェゼルがここまで走れるようになるとは……。意外性はなかなかだ。
STI
■ スバルテクニカインターナショナル TEL0422-33-7848 https://www.sti.jp/
SUBARU BRZ S STI Performance パーツ装着車
STI ではフレキシブルV バー、フレキシブルドロースティフナーリヤをはじめとするシャシーパーツと空力効果向上を狙ったエアロパーツで、街中の微小舵応答から高速走行まで、新型BRZ の魅力をさらに高めるパーツを開発。
試乗インプレッション
登場して間もないBRZに対し、STIは早くも全方位的にチューニングを施してきた。見どころはまずエアロで、フロント、サイド、リアに対してアンダースポイラーを装着。それだけで終わらず、フロント下部の両サイドにはチェリーレッドのスカートリップを準備。対してリアにはスワンネックの吊り下げ式ドライカーボンリアスポイラーを奢っている。これで前後バランスを適正化しようということのようだ。
面白いのはフロントフェンダーガーニッシュについては、ノーマルの空力が良すぎるので、そこを殺さないような形状に苦労したという点だ。何が何でもノーマルを解約するのではなく、ノーマルが良い場合にはルックスだけをあえて変化させるという手法を取っているところが面白い。
また、フレキシブルVバーとフレキシブルドロースティフナーリヤによってボディにプリロードをかけて微小操舵角におけるイン側のタイヤの反応を生み出そうとしている点。さらに、今回は10ミリダウンを実現するスプリング(レートはノーマルと同等)とピロボールが奢られるラテラルリンクセット、さらにBBSホイールを奢っているところも走りにどんな変化が出るのかが興味深い。
走るとノーマルとは違いリアのイン側の接地がかなり高まっている感覚があり、アクセルオンから即座にトラクションが生まれる動きを展開。スラロームにおける動きの一体感がかなり高く、コントロール性はかなり向上していた。懐が深くかなり大人なチューニングがそこにある。
FORESTER SPORT STI Performance パーツ装着車
フレキシブルタワーバをはじめとするパーツ類で応答性および直進安定性を高め、乗って愉しい性能を極める。SUV であっても微小舵にこだわり、ドライバーの意のままに動くハンドリングに仕上げた。
試乗インプレッション
新型フォレスター用のエアロは、前後のリフトバランスにこだわったり込みに注目! フロントリップスポイラーにはテールゲート上部に取り付けるガーニーフラップが、なんとセットで付いてくるというのだから面白い。また、スバリストにはお馴染みのフレキシブルドロースティフナーリヤもバンパー内に装着。必要な部位に対して引っ張りのプリロードをかけるというこのシステムで走りはどう変わるのか?
ノーマルを試乗した後にデモカーに乗ると、微小操舵角における応答の良さが際立っており、特にS字の切り返しではクルマが軽く、小さくなったかのようなキビキビとした反応を見せる。切りはじめから切り込み応答までリニアな動きが爽快。ドロドロとしたボクサーサウンドがより味わえるマフラーも心地良い。