【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『AUTO PRODUCE BOSS 藤岡和広』編

2021/01/06 11:38

AUTO PRODUCE BOSS

AUTO PRODUCE BOSS

独自のアプローチでチューニングに携わってきた藤岡代表。その根底にあるのは、自らの探究心とそれを実現していく姿勢と技術力に他ならない。実戦に基づいた新たなるチューニングの世界を切り開く


常識やセオリーに捉われない
なぜそうなるかを、やってみる

近年はブリヂストンとのコラボレーションでタイムアタックを行ってきたオートプロデュース・ボス。「POTENZA CIRCUIT ATTACK with BOSS86」と名づけられた赤い86は、HKS製スーパーチャージャー+2・1ℓエンジンにワイドボディを組み合わせる。しかし、ナンバー付きのまま、ラジアルタイヤのRE‐12Dを装着し、筑波で56秒台を達成してみせた。
ひと昔前ならタイムアタックといえば内装は何もないのが当たり前。軽量化すればもっと速くなる。しかし、あえて他社と同じアプローチはしない。この86はもともとRCのためエアコンはないが、内装もリアシートもそのまま。足したものはあるが引いたものはないという。そんな常識に捉われないチューニングを提案してきたのが藤岡和広代表だ。
若かりし頃からラリーやダートトライアル競技に参戦。タイヤ販売会社などでの勤務を経て1991年にオートプロデュース・ボスを創業した。ボスはハンドルボスのそれのこと。ハンドルとクルマをつなぐステアリングボスの存在のように、クルマと人をつなぐ存在になりたいという思いから命名している。

AUTO PRODUCE BOSS

狙い澄ましたスーパーチャージャー86

ハイパワーターボのFRが悩まされるのはトラクション不足。そこでトラクションが増やそう!! ではなく、トラクション対策が要らないクルマにしたらいいのでは!? というアプローチから製作されたのがこの86。あえてスーパーチャージャー仕様にすることでアクセルを踏んだ瞬間の「ドカンッ!!」というパワーが少ない。ハイパワーターボはその瞬間にリアがブレイクしてしまう。しかし、スーパーチャージャーなら過渡特性が穏やかなので、踏み始めにリアがスライドしにくい。高回転まで回すほどにパワーは出て、むしろターボよりも最高出力を高めることができる。これはタイヤへの負担と同時にコンロッドやクランクシャフトに掛かる負荷も「ドカンッ!!」と来るターボよりも少なく、エンジン的にも優しい。当初はスーパーチャージャーのベルトが滑るなどのトラブルがあったが、現在は56秒台の速さとは裏腹にトラブルフリーでアタックできている

チューニングショップであり、カスタマー車両の製作を行うが、そこで得意としているのがECU書き換えチューンだ。
「そもそもはN1耐久時代に某自動車メーカーからのレース用エンジンECUをセッティングするツールに触れたのがきっかけ」だという。それからさまざまなECUチューンを行うようになり、スーパー耐久参戦車両や1997年には全日本GT選手権GT300のチャンピオン車両(RS★Rシルビア・織戸学/福山英朗)も手掛けていた。現在はレース車両や競技車両も手掛けつつ、数多くのカスタマー車両のセッティングを行っている。そこで藤岡和広代表が念頭に置くのが、「常識に捉われず、なぜそうなるのか考え、やってみる」ということだ。
「レースではもっと絞れ絞れと燃料を絞ってパワーを出そうとする。それは燃費の面もあるので正解のひとつではあるけれど、もっと濃くしたところに美味しいポイントがあると思っていた。そこで予選だけ燃料を増量させてもらったら1秒以上もタイムが上がった」

AUTO PRODUCE BOSS

AT+スーパーチャージャーで新たな提案

この後期86はAT車。それにスーパーチャージャーを組み合わせる。マニュアルのミッションで過給器チューンは強度的に不安があるが、むしろオートマはIS Fの流れを組むATでかなりの許容力がある。ならば、そこに過渡特性の穏やなスーパーチャージャーなら300psは余裕。350psもイケるのでは!? と製作。現在は300ps仕様だがRE-12Dで筑波サーキット1分3秒8をマークしてノートラブル

ECUチューンにおいては常識に捉われないアプローチも大切だが、エンジンを壊さないというところはもっと重要。これまでの経験と、自らエンジンを製作していることが藤岡代表の強みだ。自身でエンジンを組み、セッティングをしてパワーを出して、そして、その先では壊してきている。だからこそ、この仕様ではどのあたりが境界線になるかがつかめるのだ。
そのためカスタマー車両や他のショップでエンジン製作した車両では十分にマージンを取って仕上げる。それでもECUチューンの依頼が後を絶たないのはそれでも速いから。
「点火時期もノッキングするから遅くするのは常識。でも、ノックしないところまで遅くすると遅過ぎて燃えるのも遅く、排気が溜まってしまうことがある。それによってもっとノッキングしやすいなんてこともある。じつはめちゃくちゃ点火を早くしたらウソのようにノックしなくなったりする」
そんなアプローチもセオリーに捉われず、どうしてそうなるかを考え、アプローチしてきた結果なのだ。

AUTO PRODUCE BOSS
電子制御の全カットを可能に!!

スピン防止制御をキャンセルするのが「VSCC」だ。メーカーによってVSCやDSCなどと呼ばれるスピン防止制御。ノーマルの解除ボタン長押しをして完全には法規上切れず、サーキットドライブの支障になっていた。そこでこの装置を装着すればその残っている制御を完全にOFFできる優れもの。86/BRZやZ33/Z34、マーチニスモ、ノートニスモ用などをリリース。不思議な制御がなくなり、運転しやすくなる

AUTO PRODUCE BOSS
予約シフトでスポーツ2ペダルドライブを実現!!

ECUチューンの技術を活かして製作されたのがこの「86/BRZ用 Automatic Down Shifter」。ブレーキを踏んでいる間にパドルシフトを3回引けば、速度の低下に合わせて3回シフトダウンできる。シフトダウンの予約を入れられる。海外製スポーツカーには同じ機能が純正で入れられているものが多いが、86/BRZは未採用。サーキットでは忙しいターンイン時にシフトダウン操作をしなければいけないのがストレスだったが、それを解消してくれるアイテムだ

AUTO PRODUCE BOSS

そんなセッティングスキルを頼っての依頼は多く、車両を持ち込んでのセッティングや、全国に出張してセッティングも多い。2019年からは全国のスーパーオートバックスで現地セッティングフェアも開催中。さらに、ショップ向けにECUセッティングツールの販売も行っている。純正ECUの中身を自ら紐解き、そのマップを読み解けるようにしたオリジナルツールを販売。全国数多くのショップでそのツールを用いたECUチューンが行われている。
実際にオートプロデュース・ボスに入庫したことがなくても、じつはそのクルマのチューニングにはその技術が使われていることも多い。まさにステアリングボスのように、人とクルマをつなぐ役割を担っているのだ。

オートプロデュース・ボス

長野県長野市川合新田1370
TEL 026-266-6388
http://www.ap-boss.com/






  • Amazon特別プロモーション