【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『小倉クラッチ』編

2021/01/06 11:36

Ogura Clutch

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オーガニック素材やメタル、カーボンなどクラッチ板の摩材は多彩に用意。それぞれの車両の仕様と摩材の特性から適材適所で使用している

自動車用エアコンのコンプレッサーに使われている電磁クラッチ。小倉クラッチは世界で使用されている電磁クラッチを製造しているクラッチ・ブレーキの総合メーカーだ。そんな小倉クラッチがカスタマー向け商品のブランドとして1998年に立ち上げたのがORC。そこにはどんな想いがあったのか、これまでの歩み、そしてこれから進んでいこうとする道筋とは


世界中で使われているクラッチの技術でモータースポーツを支える

力を伝達したり切断したりする機構を、クラッチという。マニュアルミッション車に使われているのは周知のとおりであり、オートマ車のトルクコンバーターも、広い意味でいえばクラッチの一種だ。
小倉クラッチは昭和13年(1938年)に、航空機関係部品を製造する会社として創業した。その翌年には機械クラッチの製造を開始し、1958年には電磁クラッチの開発をスタートしている。以降、カーエアコンのコンプレッサーに使用されている電磁クラッチは、世界中のクルマに搭載。デンソーやアイシンやサンデンといった日本のメーカーだけではなく、VALEOやMAHLE,MARELLIといった海外メーカーも、小倉クラッチの製品を採用している。
では、そんな小倉クラッチが、なぜカスタマー向けの商品開発をしているのか。ORCブランドの立ち上げから事業に関わってきた、自動車技術部次長の髙田高志さんに聞く。

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学生時代からラリー競技に参戦していた髙田さん。メーカーに捉われない自動車業界で仕事をしたいということから、小倉クラッチに入社。1998年のORC立ち上げメンバーで、以来22年間、カスタマー向けの商品開発を続けている。小倉クラッチは昭和13年創業、国内外に製品を供給する、クラッチ/ブレーキのトップメーカーのひとつ

「弊社はカーエアコン用の電磁クラッチや、一般産業用、たとえばエレベーターのブレーキシステムなどを開発、製造しています。創業してからすでに80年を超えているのですが、いまから20数年前、会社として『カスタマー向けの商品をつくることで、クルマの愉しさを広めていくことが、クルマの販売台数を押し上げることにつながる』と考えました。クルマが売れなければ、当然電磁クラッチの販売数も減ってしまいます。それではいけない、クルマは愉しいものだ、だからクルマが欲しくなる、という流れにつながる製品をつくろうじゃないか、ということです」
1998年小倉クラッチはカスタマー向け商品の開発と販売をする『ORC』を立ち上げる。
「当初販売していた製品は、ゼロヨンなどを目的に、ハードなチューニングをした車両を対象とした、ツインやトリプルのクラッチが主流でした。そのころの風潮として、クラッチを交換すると乗りにくくなる、しかし、それを乗りこなすのがカッコいい、というものも、あったように思います」

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PIT ORCはカスタマーの声を生で聞くアンテナショップ

自社製品だけではなく、さまざまなパーツも販売、取り付けを行うPIT ORC。製品の開発は裏手の作業場で行われている。認証工場のピットスペースは広く、オイル交換など一般整備も受け付けている。群馬県伊勢崎市赤堀今井町1-556-1 TEL0270-62-0050 営業時間10:00〜19:00 水曜定休

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クラッチ以外のオリジナル製品の販売がスタート

PIT ORCはA90スープラ用の10点式ロールケージをオリジナル開発。ドライビングポジションを改善するため、佐々木雅弘選手と共同開発した、専用のブリッドシート用シートレールも付属する。39万8000円(税別)

たしかにあの頃のクラッチは、やたらと重く、半クラッチもわかりにくかったし、ノイズも多かった。エンストしないようにするには、左足で思いっきりクラッチペダルを踏み、シビアな動きを意識しながらつないでいかなければ、ストンとエンストしてしまいがちだった。
「当時は扱いにくいクラッチを上手に扱える、ということが、一種のステータスとなっていたようにも思います。しかし、それでは多くのカスタマーには受け入れてもらえません。そこで弊社は、乗りやすい強化クラッチをつくることで、多くのクルマ好きに走る楽しさを感じていただきたいと考えました。

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力を確実に伝達するメタルツイン

確実なトルク伝達と良好な半クラッチフィーリングを高次元で実現したメタルツイン。チューニングエンジンなど、大トルクを確実に伝達する

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競技車用クラッチは軽さを追求

スーパーGT GT300クラスで使用されているクラッチは素材が薄く、クラッチ機構自体も小さくすることで市販車用よりも遥かに軽い

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軽快な吹け上がりを実現

ライトクラッチは純正よりもクラッチディスクの重量を軽減することで、軽快なシフトフィールを実現。高圧着クラッチカバーも用意する

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半クラの使いやすさを追求

SEクラッチに採用されているプレッシャープレートは、クッショニング機構を採用。板バネのたわみを利用し、スムーズにつながる

そこで開発したのが、2001年に販売を開始した、309/409というシングルクラッチです。ダイヤフラムスプリングを新たに開発し直すことで、ペダル踏力の軽さと、半クラッチでの扱いやすさを実現したこのシリーズは、多くのユーザーから高い評価をいただきました。そのコンセプトは、今日のクラッチ開発にも引き継がれています。これからもORCは、クラッチにとどまらず、走る愉しさを感じられるアイテムを開発していきます。モータースポーツも含めたスポーツドライビングのための製品提供を、より高いレベルで行っていく予定です」髙田さんはそう結ぶ。

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ラリー参戦車はピットORCで製作

イエローとホワイトのE4クラス車両や、グレーのE2クラス参戦車は、ORCのアンテナショップ、PIT ORCで製作されたもの。裏手にある作業場には、GRヤリスがバラバラ状態で保管されている。取材直前、ロールケージを組むために、ボディをホワイトにしたばかりだった。2021シーズン参戦に向けての車両製作が始まっている

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S耐参戦ルーキーレーシングの車両にも小倉クラッチの技術が使われている

2020シーズンのスーパー耐久選手権で注目を集めていた、ルーキーレーシングのスープラとGRヤリス。後者のクラッチはGRパーツとしてOEM採用された『GR強化メタルクラッチ&クラッチカバーセット』である

小倉クラッチ

TEL 0270-63-7236
https://www.oguraclutch.co.jp/






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