【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『DIXCEL』編

2021/01/06 11:36

DIXCEL

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幅広い車種をカバーし、国内外の需要に応えるディクセルでは、在庫管理が大変だが、迅速な出荷に努めている。広大なスペースでオーダーを待つ製品は、すべてコンピュータ管理されている

あらゆるユーザーに安心の制動力を提供すべく、45メーカー1300車種以上もの適合をそろえるブレーキメーカー。精力的に行ってきた開発テストの精度とスピードを一層高めるべく、高性能ブレーキダイナモを導入し、積極活用している


安心して使える製品を広く届けるために最新鋭のブレーキダイナモを導入

ディクセルはブレーキパッドやブレーキローター、ブレーキフルードといったブレーキ関連アイテムを幅広くラインアップ。適合車種拡大に力を注ぎ、驚くことに国内外45メーカーで1300車種以上をカバーしている。
「人気スポーツモデルでターゲットを絞り込んだアイテムを求めている人には、品ぞろえが物足りなく感じるかもしれませんが、できるだけシンプルで選びやすく、幅広いユーザーに使っていただけることをコンセプトに掲げ、開発に取り組んでいます」(企画広報 金谷大輔さん)
ここで勘違いしないでいただきたいのだが、シンプルで選びやすいラインアップだからといって、開発はラクになるわけではない。それどころか、オールマイティな特性、定番人気(サーキット走行ユーザーやモータースポーツ参加者にはスカラシップの効果もある)だからこその見えない苦労も潜んでいるのだ。

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オールラウンドの定番 Ztype

ストリートからサーキットまでワイドレンジに性能を発揮するロングセラー。「迷ったらZタイプ」といっても過言ではない信頼性。鳴き防止シムも備わる

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スリット入りの最新版 FC type

2020年の東京オートサロンで披露されたカーブスリットローターがついに1月からリリース。8本カーブはダイナモチェックで導き出した最適解だ

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高性能 DIXCEL ULTRA Racing

サーキットユーザーに好評のブレーキフルード。高温領域でも変化の少ない、しっかりしたペダルタッチで、コントロール性に優れる。ストリートもそのまま使える

一例を挙げると、仮にZタイプのブレーキパッドを装着していたユーザーが新型車に乗り換えたとしよう。新しいクルマは車重が増えたり、走りのパフォーマンスが一段と高まっていたりするのだが、ユーザーとしては、同じZタイプで以前の愛車と変わらないブレーキ性能とフィールが得られると考えるはずだ。
もちろん、ディクセルでは開発時に、クルマやタイヤの進化を見極めてのアレンジを適宜加えて、どの車種でも同じような、ディクセルらしいプレーキパフォーマンスが味わえるように仕上げている。しかし、豊富なテストデータやノウハウを持っているといっても、その難しさは並大抵のものではない。どれだけ摩材を熟知して製品に注ぎ込んでいくかは、開発スピードと確かなものづくりを左右する鍵といえるだろう。

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実車では実現不可能な条件でのログデータ収集など、使い方次第で多彩なシミュレーションが可能なブレーキダイナモ。製品開発だけでなく、コロナ禍でサーキットテストが不足した2020年のモータースポーツシーンでも大いに活用されることになった

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岡山国際サーキットで田中哲也選手がVAB WRX STIをドライブした際のデータを入力し、踏力や摩擦係数、速度といった変化をシミュレート。データ推移を細かくチェックして、主力製品の性能確認および性能向上に役立てる

そんな事情を知ったうえで注目したいのは、ディクセルの開発棟に鎮座している最新鋭のブレーキダイナモだ。
世界中の有名自動車メーカーも使用している、このマシンは、億レベルの設備投資となるが、開発テストの精度とスピードアップを図るため、2019年3月に導入された。ログデータの入力や応用など一連のセットアップを終えて、同年秋ぐらいから本格稼働を始めている。
「従来の開発はノウハウや経験、テストドライバーの評価コメントに頼るウエイトが大きく、アナログ的でした。もちろん、パッドに温度センサーをセットするなど、各種のログを取ったり、評価試験を外部に委託したりしてきたのですが。それでも手探りのジレンマはあったのです。そこで、しっかりと根拠を備えてスピーディな開発が行えるようにと導入したのがブレーキダイナモ。温度や摩擦係数などリアルに性能変化をチェックできますし、長年サポートを続けているモータースポーツにしても、データをしっかり示したうえで、テストモデルを使っていただけます。1月からリリースのカーブスリット入りのローターにしても、本数やカーブラインの付け方による性能比較が、ダイナモで正確に行えました」(技術開発部 次長 蒲池將史さん)

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スーパー耐久/スーパーGT参戦チームをサポート

設立の翌年となる2004年からスーパー耐久やスーパーGTなどをはじめとする国内外のモータースポーツを積極サポート。長年築き上げてきたチームとの信頼関係で、実戦やテスト走行における貴重なデータを収集。モータースポーツはもちろん、市販品にもフィードバックしている

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サーキットで徹底テスト

パッドやローター、フルードのサーキットテストも精力的に行っている。アドバイザリードライバーはベテランの田中哲也選手。プロドライバーの好みに特化せず、あくまで一般ユーザーの扱いやすさを重視している

なお、こうしたテストデータは通常公開されないが、ディクセルでは信頼性の証としてデータ公開も積極的に行っていくとのこと。開発体制の強化は既存製品の品質確保や品質向上、新規製品の市販化、OEMやモータースポーツへの対応力アップに直結している。国内のみならず海外に巨大なマーケットを持つ同社ゆえに、ますます日本のテクノロジーに対する世界の評価を広めてくれることになるだろう。

ディクセル

http://www.dixcel.co.jp






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