【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『阿部商会』編

2021/01/06 11:35

BILSTEIN TECHNICAL CENTER ABE SHOKAI

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メルセデス・ベンツに採用されて高い評価を得たことにより、サスペンション界のトップブランドへの道を切り開いたビルシュタイン。日本では阿部商会が正規輸入代理店となっており、そのパートナーシップは40年以上にもおよぶ。世界中の自動車メーカーやカスタマーが絶大な信頼を寄せるビルシュタインの、日本における中枢に迫る


世界的なブランドの看板を背に国産車用キットの開発に力を尽くす

世界中に多くのサスペンションメーカーが存在する中で、トップクラスの知名度を誇るビルシュタイン。60年以上にもおよぶ歴史の中で培った技術やノウハウを活かし、欧州車はもとより国産車にも多数純正採用されてきた。
一方、アフターパーツとしての実績も申し分なく、車高調や純正形状のキットなど多彩なモデルをラインアップし、対応車種もじつに豊富。実際、愛車にビルシュタインを装着したことがある読者も多いことだろう。
そんな信頼と実績に裏づけられたビルシュタインだが、日本では1978年から阿部商会が正規代理店として輸入販売をスタート。そして、日本の拠点として重要な役割を担っているのが、2000年に設立されたビルシュタイン・テクニカル・センター(BTC)だ。

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ドイツ本国から輸入したシリンダーは、下地づくりから焼きつけ塗装まで5つの工程を踏んで鮮やかなビルシュタインカラーに仕上げられる

全世界でのネットワークをつくる目的で開設されたBTCは現在、ドイツ、アメリカ、イギリス、中国、日本の5カ国にある。基本的にはビルシュタインが運営する直営なのだが、日本だけは特例で阿部商会が運営している。これは、1978年から正規輸入代理店として残してきた多くの実績と信頼があったからこそといえる。
BTCの中心業務はダンパーキットの開発と生産で、「おもに国産車用キットの開発・生産を行っています。ただし、ここで開発してドイツで生産する場合や、ドイツで開発されたものを日本仕様に手直しすることもあります」と、センター長の矢代義貴さん。とはいえBTC設立前はこのようなシステムが構築されておらず、「以前は年に一度ドイツからエンジニアが来日し、対象となる国産車を集めて開発やセッティングを行っていました。ただ、それでは新車が出てからのタイムラグがあり過ぎるので、BTCを設立して開発や生産はこちらで行うようになったんです」と、阿部商会・関東営業所部長の曽根潔さんは話す。

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この機械はシリンダー内に3種類の部品を圧入する専用機。開発に1年掛かり、以前の手作業から大幅に作業効率と精度が向上した

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最初にガスを封入し、その後オイルを注入。ビルシュタインのダンパーはガスを入れるバルブがなく、注入方法は企業秘密。ちなみにどのダンパーでもオイルは一緒

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専用のテスターはダンパー特性を数値やグラフで表示するため、仕様変更時の変化を確認でき、変更前と比較できることがメリットだ

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塗装は基本的に外注がメインだが、小ロットの場合は自社で塗装を行う。ビルシュタインを象徴するイエローをガンで吹き、別フロアにあるブースで焼きつけ。美しさとともに高い耐久性も実現する

そして、BTCで開発・生産される商品はいずれも高いクオリティへの意識やこだわりを感じさせるもの。材料はドイツ本国から輸入しているのだが、シリンダーはサビなどをさらった後に手作業(!)でバフを掛け、メッキ加工を施したうえにサフェーサーを吹いて焼きつけ塗装をするといった工程を踏んでいる。また、ブラケットなどもバリ取り作業を行い、取り付ける際も精度を高めるために専用の治具を用いている。それらは社外で行われているのだが、社内での作業も豊富な経験を持つスタッフが品質検査をし、1本1本丁寧に組み立てられ、高品質の製品がユーザーのもとへ届けられるのだ。ちなみに開発は新車のダンパーを取り寄せて3Dスキャナーで採寸する。数年ほど前までは目視で採寸していたというから、つねに新たな技術を投入し品質の向上に努めているわけだ。

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加工や測定の精度がここ数年で大幅に向上したため、ブラケットの曲げ加工も思いどおりに。数種類の研磨剤を使ってバリ取りも行う(左写真)。また、ブラケット位置やネジ部分を確認する治具(右写真)を用いて精度を高めている

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ここでダンパーロッドにピストンやシムを組み込む。壁に掛けられているのは、減衰特性を決めるためのシム。その数は膨大だ

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外径や厚み、オイル流路など、シムには多くの種類がある。それらを何枚も組み合わせ、伸び側と縮み側の減衰特性を決める

また、サーキットユーザーにとっては車高調に目が行きがちだが、純正形状に力を入れることを意識しているとのこと。それに対して曽根さんは「最近主流となっているストラット式ではスプリングが特殊な動きをするので、車高調でさまざまな課題をクリアして最適な乗り味にするには極めて時間が掛かるんです。あとは自動運転への対応ですね。自動車メーカーとしては、車高を下げたことで自動運転が正常に作動しなくなることを懸念しています。弊社としてはそういった部分を考慮し、純正形状に力を入れようということなんです」と語る。
そうした業務を行っているBTCでは、ここ数年で若手が育ち、商品も可能な限りコストを抑えながら耐久性をよくするといった部分にも力を入れているとのこと。次世代を支えるエンジニアの成長とともに、BTCが開発・生産する新商品からも目が離せない。

阿部商会 ユーザー専用ダイヤル

TEL 0800-100-4182
https://abeshokai.jp/

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住宅にもビルシュタインを

ビルシュタインのダンパーは地震の揺れに対して減衰特性が合っているということで、住宅用の制振装置としても注目されている。静岡県の千博産業が扱う「evoltz(エヴォルツ)」がそれ






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