【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『HKS』編

2021/01/06 11:33

HKS

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1973年10月、ヤマハ発動機出身の長谷川浩之前代表が創業したのが始まり。47年の歴史を刻む、それこそ世界に誇る日本のチューニングメーカーだ。サスペンション事業は94年からと後発だが、いまや同社を代表する部門のひとつ。改めて深堀りする


耐久試験機を導入し、データ・数値で検証
安全と品質の核となる耐久性へのこだわり

日本のチューニングシーンをけん引するHKSを語るうえで、創業者、故 長谷川浩之前代表の先見の明は外せない。たとえば、創業2年目、まだ日本車にターボ搭載車がない時代にターボキットを市販化したり、耐久試験機を導入して性能の数値化を推進したり、パーツの内製化にこだわったり、『挑戦』というワードに、つねに向き合う姿勢は、本日に至るまで社風として受け継がれている。
今回はサスペンションにスポットを当てるが、同社の事業の中では後発に位置するカテゴリーだ。
レーシングエンジンをつくりたいと創業し、すぐさまターボキットを市販。すると、今度は制御系や燃料系、冷却系や吸排気なども必要になってくる。「その都度、つくるもの、製品化するものが増えていきました」と、取締役営業部部長の坂詰達也さん。

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社屋の一画に設けられているミュージアム。これまでの歩みが刻まれたパネル、手掛けてきた競技車両やエンジンが保管されている(一般には非公開。F1用の3.5ℓ V12『300E』や、ウルトラライトプレーン用の水平対向エンジンも展示)。同社の果敢なチャレンジの繰り返された歴史を改めて振り返ることができる

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スイフトスポーツのSS tuneでもHIPERMAX Ⅳシリーズは中核をなす。電子制御デバイスの介入を抑えるパーツの開発も検討されている

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新型車への対応も早い。スープラはA90に続き、A91も導入し、解析と既存製品の適合検証、新たなパーツ開発に着手。写真はA91のRZ

もう想像がつくだろう。パワーを上げたクルマに、それを支えるフットワークが求められる。サスペンションパーツもまた、必然的な流れだったのである。
しかし、やり方が凄かった。「93年に内製のサスキットをつくっています。フォーミュラ用で、基礎研究です」とサスペンション開発課 課長の矢部健司さん。HKSのルーツはレースにあるが、同社サスのルーツもレースに直結。HKSブランドのサスキット自体は92年に発売されたが、それは他社製ダンパーをベースとしたもの。その間、並行して開発を進め、オリジナルのサスキットを完成させたのだが、『4wayダンパー』の名称が示すとおり、伸/縮それぞれ2wayの減衰力調整が備わる超ハイスペック。第2世代のGT‐Rをはじめ、それなりに需要を得たが、機能が多過ぎて、逆にセッティングに苦慮するチューナーも少なくなかったという。

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いきなり超高性能モデルでスタート!
HKS車高調サスキットの歴史

今日のHIPERMAXシリーズに至る基礎をつくったのは、レース由来の4way DAMPER。伸/縮それぞれ2way×2というハイスペックゆえに、使いこなせない例もあったという。研究し、ノウハウを高め、オリジナルのサスキットとして、98年にリリースされたのが、HIPER DAMPER。HIPERMAXの第一弾だ。進化を重ね、現在のⅣシリーズに至っている

ユニークなのは、当時からデュアルレートのスプリングを採用していたこと。いまでこそ、伸び側のストローク確保への関心が高まっているが、25年以上前にすでに着目していたのだ。
ゼロから技術と設備をつくり上げ、98年、ついに『ハイパーマックスⅠ』(当時はハイパーダンパーと呼ばれていた)が登場する。そのときからハイパーマックスシリーズの特徴は単筒式で、ストラットの車種では、さらに倒立式であることに変わりはない。また、「現車装着未確認で発売することもない」(坂詰さん)とのことだ。

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HIPERMAX Ⅳ GT 20SPEC

ストリートからサーキットまでをカバーするHIPERMAX Ⅳ GTの進化モデルが20 SPEC。スムーズな減衰力特性に貢献する『プリロードバルブシステム』を採用

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HIPERMAX G

HIPERMAX G。純正形状ダンパーは幅広い車種の需要、自動車メーカーをはじめとするOEMに対応しやすく、HKSの念願だった

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自社製ピストンやシム、ニードルなど、何を使い、どう組み合わせるか? 高い真円性を誇る精度の高い単筒式のケースなど、各部にこだわりが注入されている。材質やグリスの組み合わせ、メタルのクリアランス調整などにより、耐久性を高めている

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デュアルレートも含め、さまざまな形状のスプリングを製造できる。試作もすぐ用意できるので、サスキットの開発スピードにも貢献している。音・振対策のサイレントチューブやラバーシート、バンプラバーもそろえる

さらに、耐久試験機を駆使し、データや数値に基づいて開発を進める。試験機も都度更新され、それに合わせて製品も進化を遂げていく。その結果、3年6万km保証を謳うに至った。
製品の体幹=耐久性は重要な部分。クローズアップされにくい地味な部分だが、それが根底にあってこそ走りの性能を磨き上げることができるのだ。
『ハイパーマックスⅣ』ではVPS=可変ポートシステムを投入。伸/縮それぞれ最適な減衰力が得られる機構で、減衰力を緩める際にとくに有効。減衰力調整の実用域を広げることが可能になるなど、高性能化は止まらない。
そして、「車高調よりも難しい」(矢部さん)、純正形状ダンパーも確固たる製品『ハイパーマックスG』を完成させた。純正形状のスプリングとロアシートを備え、単筒式(ストラットは倒立式)にこだわったサスキットは、コペンの純正アクセサリーに採用されるなど、自動車メーカーのOEM事業にも発展している。

デスプリングもダンパーもすべて自社生産

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エッチ・ケー・エス

TEL 0544-29-1235
https://www.hks-power.co.jp






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