【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『FUJITA ENGINEERING 藤田儀晴』編
2020/12/25 18:11
- CATEGORY : コラム 創刊30周年記念インタビュー
FUJITA ENGINEERING
八尾から堺に本拠を移してからは、ほぼロータリー専門となった。ここで修行し、独立して行ったエンジニアは多く、それも藤田代表の誇りだ。就職を希望する若者は、可能な限り受け入れており、現在は3名のスタッフが活躍中。平均年齢は26歳。左から河野裕樹さん、勝木崇文さん、世古正一さん。工場長の勝木さんは86/BRZ Race参戦中
生産終了から8年が経ってなお、第一線の速さを誇るマツダのロータリー車。藤田エンジニアリングは、頑固一徹、ロータリーチューンひと筋の名門。REに掛ける熱い想いを藤田儀晴代表に聞く
醒めることのないREチューンへの情熱がファンの心をつかみ続ける
中学生の頃、知り合いが乗っていたファミリアロータリークーペの吹け上がりにシビレて、虜になった。免許を取得してからは、カペラやサバンナRX3で、地元のサーキットに通い詰めの日々。
在阪の自動車整備工場に就職し、社会人になってからも、ストリートゼロヨンをステージに、密かにロータリーチューンのテクニックを磨き続けた。誰に教わったわけでもなく、すべて独学。失敗と成功の繰り返しで身につけた技術とノウハウだ。
そんな藤田代表のさらなる高みを目指すREチューンとの格闘は、ロータリーの名チューナーといわれるようになってからも終わりなく続いている。
「REのチューニングは、すべて人(自分)の手加工によって仕上げます。そこがレシプロエンジンとのいちばんの違いであり、醍醐味です。手作業だから、厳密にいえば同じエンジンはふたつとつくれません。そして、ベストといいきれる加工法は、いまも見つかっていない。このエンジンは死ぬまで挑戦なんです」
デモカーはすべて街乗り対応スペック快適にして圧倒的な速を誇る!
レーシングカーではなく、あくまでも街乗りできるチューニングカーをつくるのが、藤田代表のモットー。新しい技術やパーツを開発するためのテスト車両でもあるデモカーも、すべてエアコンを搭載。デートカーとしても使える快適度をキープする。中でも、藤田代表が「自分を育ててくれたクルマ」と話す魔王号は特別な存在。峠を照準とするラジアル履きのストリート仕様にして筑波を58秒5で走る快速。ホームコースのセントラルサーキットは1分20秒フラットで走る!
群サイやセントラルサーキットで圧倒的な速さを発揮する魔王号。エンジンは低中速重視のサイドポートスペック5仕様。GTX3584RSタービンで過給する
GT3はタイムアタック照準で開発。その名のとおりFIA GT3をモチーフとするワイドフォルムが圧巻。今季はミッションをOSの7速シーケンシャルに換装し、筑波57秒切りを狙う!
2012年をもって生産が終了したマツダのロータリーエンジンを、いまも「最強のパワーユニット」と断言。ロータリーチューニングを進化させ続ける藤田代表。歳を重ね、「可愛くてしょうがない」と目を細める初孫ができた現在も、チャレンジ精神は若い頃のまま。ロータリーチューンの最前線を走り続ける。
自らもRX‐7(FD3S)を4台所有するロータリーフリークである。「新しいチューニングのヒントは、普段使いの中で見つかる」というのが持論で、仕事場へは愛車のRX‐7で通う。文字どおり、ロータリーと歩む人生だ。
そんな藤田代表には、ショップ創業以来の変わらぬクルマづくりのモットーがある。それが「レーシングカーではなく、あくまでもストリートユースに対応する速いチューニングカーをつくる」というものだ。
RE搭載の最終モデルとなるRX-8では、『ツインブリッジ吸気+ペリ排気』という独創の技術を考案。全域での出力向上を実現
RX-8のロータリーをスワップしたNCロードスターを製作。10000rpmを許容する仕様で、走りの楽しさはS2000を超える!
オリジナルのエアロブランド『アフラックス』を展開。ver.Vは、新しいRX-7の登場を夢見る藤田さんが、新型のフォルムを想像してデザインしたものだ
愛車はFD3Sで、全4台を所有する。大御所にして、つねにユーザー目線だ。藤田代表はカスタマーのニーズを真摯に受け止めている
エアコンを装備し、極端な軽量化は施さない。そしてポートチューンは低速を犠牲にしないサイドポートを基本とする。峠での速さと、街乗りでの扱いやすさ、そしてスタイリングのよさまでも追求したFD3Sベースのデモカー(魔王号)はもちろん、筑波サーキットで57秒切りを狙うタイムアタック仕様のデモカー(GT3)も、断固としてこのモットーを貫く。
「速さやタイムのためになら何でもアリ。そういうクルマをつくるつもりはありません。ロータリーは、誰もが気軽に圧倒的なパワーとスピードを楽しめるエンジン。そのパフォーマンスはストリートチューンでこそ、最も生きるんです」と言葉に力を込める。スーパー耐久でチームをシリーズチャンプに導いたエンジンを手掛けても、ニュル24時間レースのための専用エンジンを製作しても、藤田さんの軸足はストリートチューン。藤田エンジニアリングの技術は、マツダのロータリー車を愛するすべてのユーザーためにあるのだ。
ロータリーモデルの速さと魅力を高めるオリジナルパーツも続々開発!
製造廃止された、耐久性に優れた3分割のアペックスシール を、先駆けて開発した藤田エンジニアリング。RE車の速さを磨く技術はエンジン以外にも多岐にわたる。オリジナルの車高調は、最近アップデートされ、動きがよりしなやかに。FD3S用の標準仕様のバネレートはF:16㎏/㎜、R:18㎏/㎜だ
高耐久を保証する高精度チューン
部品の廃番ストックパーツで対応
許容誤差とするロータリーの重量差は4グラム以下。このシビアさが、藤田チューンのREに、独自の耐久性をもたらす。純正部品の高騰や廃番がいま最大の悩み。ファクトリーの倉庫には貴重なパーツがあふれる
オリジナルの2way L.S.D.はKAAZに特注するスペシャル品。ディスク枚数を減らし、イニシャルトルクを下げることで扱いやすさと高いロック率を両立させている
「ないものは独自につくる」が藤田流。写真右は製廃となったクラッチレリーズサポート、左は電源ラインを強化した大容量フューエルポンプの取り付けユニットだ
藤田エンジニアリング
大阪府堺市東区八下町82-1
TEL 072-258-1313
http://www.fujita-eng.com/