【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『TRUST』編
2020/12/25 17:59
- CATEGORY : コラム 創刊30周年記念インタビュー
TRUST
創立以来43年もの歴史を持つ老舗パーツメーカー。現在は開発出身の池田 勝 取締役社長のもと、テスト、競技参戦、イベント/フェア出展など、あらゆる機会を技術力アップ、パーツ開発、プロモーション、ファンとのコミュニケーションにフル活用し、魅力的なアイテムを次々と生み出している。風通しのよい各部署の連携は、先進的なテクノロジーの源だ
チューニングファンを「偉大なる渦」に巻き込む、
さまざまな挑戦と提案
世界的なパーツメーカー、トラストが創立されたのは昭和52年(1977年)。当時は現在のようなスマートな業界イメージではなく、パワーアップもメカチューンからターボへと主役が代わるタイミングだった。
そうした激しい変化の時代にトラストは、競技用のエキマニやマフラーの製造元として立ち上る。レース色の濃いメーカーだったのだ。そして、製品の評判のよさから、すぐにストリートチューンにも進出することになった。
そこから、ターボ関連パーツや電子機器、インタークーラーやサスキット、エアロパーツ、オイルなどのアイテムを順次そろえていき、トータルチューニングパーツメーカーとしてのポジションを築いていったのだ。
ちなみに、当時を知る人の印象に強く残っているトラストパーツといえば、三菱製のTDタービンを使った『グレッディシリーズ』ではないだろうか。
チューニング向けのタービンは、海外製がメインで価格も高額だったが、そこにトラストはグレッディというブランドから国産品でリーズナブル、サイズ展開も豊富なTDタービンを軸としたターボシリーズを投入。純正ターボシステムに対応するアクチュエーター式もそろえたことで、ターボチューンの流行を一挙に加速させたのだった。
その他の同社を語るうえで外せないのが当時の国内レース最高峰『全日本スポーツプロトタイプカー耐久選手権』(グループC)や全日本ダートトライアルなど、トップカテゴリーへの挑戦である。コンペティションの世界で技術向上やノウハウの蓄積を進め、パーツメーカーとしての総合力を高めていったのだった。
なお、モータースポーツといえば、R35GT‐RでのD1グランプリ参戦もある。周囲を驚かせた車種選択で、搭載されたVR38DETTには最新の技術をつぎ込み、ドライバーに川畑真人選手を起用するなどの体制を敷き、参戦2年目にはシリーズチャンピオンを獲得。その後も末永正雄選手を迎えての2台体制で好戦績を残した。
世界に通用するブランドネーム『GReddy』は英語のGREATとEDDYを組み合わせた造語で、『偉大なる渦』という意味を持つ。当初はターボシリーズ用のブランドネームだったが、現在ではすべてのアイテムに掛かる。トラスト製品はひと目でそれとわかるつくりがなされているが、そこに『GReddy』のアイキャッチが備わることで、それが、より鮮明になる。そうした演出もまた、同社の伝統である
それ以外でも、同社はチューニングカーのタイムアタックやスーパー耐久シリーズなどに直接的あるいは間接的に関わっている。また、全国の量販店のフェアなどで直接、カスタマーと触れ合うなど、精力的に動いているメーカーとして知られている。
「イベントに参加させていただくのは、パーツ開発や販売のためでもありますが、いちばんはトラスト製品を使ってくださるカスタマーとの交流で、生の声を聞くためです」と、広報部の川島徹さんはその理由を語る。
周知のとおり、最近のクルマは電子制御が高度になっていたり、クルマを取り巻く環境の変化によってチューニングを施すことが難しい面も出ている。
そんな時代だからこそ、リスクなくストリートでもサーキットでも気持ちよく走れて、なおかつノーマルの扱いやすさや使い勝手、価値を下げないという視点でのパーツ供給が重要になっている。よって、工場にこもるのではなく、多くの意見を聞くため「外へ出ていく」のだそうだ。
ターボキットなどのマニアックな製品も、加工なしの装着が必須となる。効能、信頼性、整備性など、求められるものは大きい。トラストは開発部署を経験した人材を営業や企画といった別部署にも配置して情報収集や社内への伝達、現場でのサポート力を高めている
FK8シビック タイプRのパーツ開発が進められていた(2020年10月末取材時)。トラストにはイメージ的に馴染みの薄い車種だが、吸排気、冷却系、フットワークなど、リリースが楽しみだ
そうした活動の効果を象徴しているのがマフラーだ。同社にとって、マフラーは原点のパーツなので、86などのスポーツ系車種には性能重視の『パワーエクストリームR』シリーズを展開している。
そして、別バージョンとして、たとえば性能と消音のバランスを重視したり、ルックスを先進化させたりなど、新たな提案の製品を追加していくことで、トラストらしさの表現と多くのカスタマーの共感を得ている。現在、高い人気を誇る『コンフォートGTスラッシュマフラー』もそういった流れに沿って生まれたアイテムだ。
もっとも、製品のバリエーションを増やすことは、利益性や合理化の観点で、デメリットが生じるかもしれない。しかし、その点について川島さんは「カスタマーがチューニングを楽しみ、自分好みにクルマをアップデートしていくためには、そうした取り組みが必要だと考えています」と語る。
実際、カスタマーと顔を合わせて話ができるイベントでは、彼らに『仕様変更』という楽しみを与えられていることを実感しているとのこと。
開発中のeSports用シミュレーターフレーム。各部の調整機能が充実しており、最適なドライビングポジションを実現しやすい。フレームの剛性はもちろん、配線類をスッキリさせるための工夫も施されている。こちらは本格的な競技者向けだが、家庭用のコンパクトなシリーズも製作予定とのこと
現在進行中のコンプリートカー製作プロジェクトはZC33Sスイフトスポーツと86、それにVAB WRX STIの第2弾となる予定。スイフトユーザーにお馴染みの同社 渡部展之さんも自信を持ってオススメできるクルマにするとの意気込みで、デモカーで培ったノウハウがフィードバックされることになる
開発部課長の中上信吾さん。パーツ開発やコンプリートカー製作の要だ
さて、今後を見据えて鋭意進めているのが、コンプリートカーの製作・販売だ。第一弾は2020年の東京オートサロンで公開し、大反響を得たVAB型WRX STIで、現在手掛けているのは86/BRZとZC33Sスイフトスポーツ、そして再びVAB WRX STIの3車種である。
詳細な仕様はまだ公表されていないが、トラストの最新テクノロジーが注がれた「完成度の高いチューニングカー」が購入できることは魅力的だ。
トラストのさまざまなチャレンジは、多くのクルマ好きにチューニングへの興味と刺激やワクワク感を与えてきた。そして、それはこれからも続くことを、取材では確信した次第だ。
トラスト
TEL 0479-77-300
https://www.trust-power.com