【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『Kansai SERVICE 向井敏之』編

2020/12/25 17:51

Kansai SERVICE Performance

Kansai SERVICE Performance

日本を代表する老舗チューナーはストリートを重視して、日常から味わえるチューニング効果を大事にする。それでありながら、ここでトータルチューンがなされたクルマはサーキットでも速いタイムを叩き出すのだ


確固たる比較基準としてデータを集めトータルチューンで速さと楽しさを生む

GT‐RやWRX、86にスープラ、スイフトなど、特定車種に固執するのではなく、チューニングベースとして期待されるクルマの魅力をさらに高めるべく、精力的かつフレキシブルに向き合っているのが、日本を代表する老舗チューナー、関西サービスの向井敏之代表だ。
関西サービスのこだわりに触れていくうえで、最初に述べておきたいのは、フルノーマルからデータ収集と解析を徹底的に行うアプローチを貫いていることだ。
それは、ベース車両の素性や弱点までも余さず見極めて、チューニングによるパッケージングの最適化を図ることが狙い。その徹底ぶりは凄まじく、データのない新型車はもちろんのこと、すでにセッティングノウハウが熟成されたともいえる車種の、イヤーモデルでさえもゼロからデータ収集と解析に取り組むほどだ。

Kansai SERVICE

「学生時代にモトクロスなど、モータースポーツに取り組んでいたこともあって、データという基準づくりの重要性が身に染み込んでいるんですよ。どのように手を加えるとしても、その効果を正確に評価しようとするなら、感覚ではない確固たる基準が必要になる。ですから、最初の基準づくりとなるノーマルのデータ収集では、素材としての見極めも絡むので、時間を掛けてじっくりと取り組みます。クルマはエンジンのポテンシャルだけが高まっても、走りのよさには結びつきません。トータルパッケージが重要です。
ですから、こうした作業はマイナーチェンジでも、同様にゼロからアプローチを行います。自動車メーカーの開発意図を感じ取りながら、進化したポイントの効果を見極め、車格に見合ったパッケージングの最適化はどのようにすれば実現できるのかを思案してから、初めてチューニングを進めていくのです」
ちなみに、そうしたデータがもたらすメリットは、関西サービスを訪れるカスタマー車両に対するチューニングノウハウとして提供されるだけでなく、カルテ作成というカタチでもフィードバックされている。どのような作業をいつ、何㎞走行時に施したのか。オーナーですら記憶が曖昧になる部分をデータ化していくことで、走行距離や走り方に応じたメンテ提案を的確に行っているのだ。

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また、関西サービスといえば、つねに10台以上所有するデモカーの数でも知られるが、それは熟成させたパッケージをユーザーに試乗してもらうだけでなく、進化の糸口をいつでも探れる体制を整える目的もある。タイヤの性能が進化すれば、グリップレベルに見合ったフットワークのアップデート、新型タービンが登場すれば、従来モデルとの比較検証といった具合に、新たなチューニングメニューの探求にデモカーは不可欠なのだ。

そうした姿勢が強く伝わってくる好例は、生産終了から20年近く経過する第二世代GT‐Rに先日用意された、カーボンプロペラシャフトだろう。
純正部品は廃版、ニスモのヘリテージパーツでもカバーされずに困っているユーザーに向けて、リフレッシュだけでなく、先進技術によるアップデートまでも提案。注目を集める新型モデルだけでなく、オーナーの想い入れが深い往年モデルまで、進化を探り続けるその姿勢は、全国区で長いつき合いのカスタマーを抱える老舗チューナーならではだ。

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スープラRZチューン進行中! 次はヤリスGR-FOUR

Kansai SERVICEでは操りやすいハイパフォーマンスカーに仕上げるべく、A90スープラと向き合っている。電子制御を備えた純正ダンパーを活かすハイパーマックス・ツーリングのデータ収集と独自のセッティングを終え、車高調サスキットのハイパーマックスⅣ SPと純正同サイズのADVAN A052によるセカンドステップに進んでいる。納車され次第、開発に着手する予定のGR YARIS GR-FOURも控えている

なお、現在、鋭意開発中のデモカーはスープラRZなのだが、現時点の、その仕上がりには、速さのパフォーマンスより、トータルパッケージを重要視する関西サービスらしさが強く表れている。エンジンはECUの書き換えだけでも圧巻のパワー&トルクが引き出せるが、電子制御が介入しやすいため、あえて中間領域は抑えて、フラットトルクな450㎰にまとめる。また、タイヤにしても、フロントを太くするとステアフィールがスポイルされるので、前後とも純正サイズのハイグリップラジアルを選んでいる。サスもデフの違和感や電子制御の介入を抑える方向でチューンを進める。

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テストを重ねてベストバランスな速さと位置づけたのは中間領域を抑制したフラットトルクの450ps仕様。吸気チューンのテストにも取り組む予定

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ハイパーマックスⅣ SPはリアの縮み側のストロークを10㎜増やしている。キャンセラーも装着。シャープな回頭性とリアの高い接地性&追従性を感じる

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ABS介入を抑制しながらストッピングパワーの向上を狙い、ブレーキパッドをテスト。ユーザーの選択肢拡大も図るために、ENDLESSとProject μの2ブランドで確認を進めている

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カルテによる顧客管理を徹底。デモカーのデータ化もそうだが、カスタマー車両もカルテをつくってデータ化。適切なメンテ提案を行う。担当スタッフが不在でも、素早く対応するための情報共有にも活かされている

「好タイム=いいクルマとはなりませんし、サーキットという限定されたステージに特化した速さを引き出しても、それがそのままストリートで活きるワケじゃない。限界領域の確認や基準データを得るテストのひとつとしてサーキットテストは行いますが、チューニングカーはレーシングカーではないので、あくまでもメインステージはストリートです。重要なのは走り方や感じ方によって正解が無数にあるストリートにおいて、どれだけそのクルマの魅力を高められるか。使い勝手やかっこよさまで含め、車格にも配慮したフレキシブルなアプローチを図っています」
 ストリートチューンはパッケージングが重要という確固たる信念、そして、つねに蓄積が進められるデータ収集と進化に対する探究心。昭和58年の創業から38年間、数々の国産スポーツに注がれてきた関西サービスのこだわりは、このあと登場する新型車にも、変わることなく振り向けられていくはずだ。

Kansai SERVICE
カスタマー第一主義に基づく環境と作業システムづくり

向井代表のこだわりを受け継ぐベテランスタッフが多数在籍する。作業効率の向上や迅速なカスタマー対応を図るために、広大なピットスペースには多数のリフトが用意され、ダイナパックやアライメントテスターといった主要設備もそろう。また、走りの楽しさを左右するのはフットワークというわけで、専任スタッフによるダンパーファクトリーまでスタンバイ。デモカーのセット変更だけでなく、カスタマー車両のサスキットのオーバーホールや仕様変更もこなしている

関西サービス

奈良県奈良市小倉町1080
TEL 0743-84-0126
https://www.kansaisv.co.jp/






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