気になる輸入車サーキットインプレ II in 袖ヶ浦フォレストレースウェイ 最新刊情報
2014/06/25 08:52
旧R56シリーズ同様に
速くて楽しいFFスポーツ
F56 MINI COOPER S
■BMW カスタマー・インタラクション・センター
フリーダイアル0120-3298-14 http://www.mini.jp
Photos/小宮岩男 Text/宇井昭典
堂々の大きさになってしまったが
重くはなっていない
BMW製となって生まれ変わったMINIが登場したのは2001年のこと。『ONE』『COOPER』『COOPER S』(JCWを除く)というラインアップが基本で、その初代R53 COOPER Sはスーパーチャージャーにより170psをマークするホットモデルだった。2006年にR56にモデルチェンジしてからは、少しボディサイズがアップ。COOPER Sの過給器はターボとなって、ピークパワーは175psに向上。そして、昨年、F56へと移行したのだが、今度のCOOPER Sは2.0Lターボとなって、192psを発揮するにいたったのだ。
ボディサイズはR56に比べ、全長95mm、全幅40mmのサイズアップ。全高こそ15mm低いが、堂々の3ナンバーサイズとなってしまったため、「大きくなった」という実感は否めない。ただし車重は変わらないのが最新のパターンで、燃費対策という意味合いが強いが、スポーツドライビング派にもうれしいニュースだといえるだろう。
BMWの2L直4ターボエンジンを横置き
6速MTと6速ATが選択可能
直列4気筒に変更はないが、排気量はこれまでの1.6Lに対して、2.0Lにスープアップ。ターボで過給し、192psを発揮する。ダウンサイジングの流れに逆行するように思えるが、これはBMWの直列4気筒ターボのベーシックエンジンでもあり、それを横置きにマウントして使用しているのだ。ダウンサイジングは下位モデルに委ねるカタチとし、BMW上位モデルと共通化してコストダウンを図ったともいえよう。排気量が上がったことで余裕が生まれ、先々チューニングメニューが確立されると、相当速いMINIをつくることができそうだ。メーカー版チューニングカーであるJCW(ジョンクーパーワークス)など、この先、導入されるであろうモデルにも期待が持てる。なお、試乗車は6速MTだったが、6速ATも選択可能だ。
サスペンションやブレーキは、これまでの流れを踏襲。サスはフロントがマクファーソンストラット式、リアがマルチリンク式となるも、リアはコイルとダンパーが別体化。さらにテスト車には、オプションのダイナミックダンパーコントロールが装備され、2段階に減衰力を調整できる。ブレーキはフロントベンチレーティッド、リアソリッドのディスクで、キャリパーは前後とも片押し式。
スポーツ性と居住性を
ますます両得する室内
ドライビングポジションは大きく変わらず、FFコンパクトの中では自由度が高い。オルガン式のアクセルペダルもそのままだ。COOPERに比べてサイドのサポートがより高くなっているシートを装着するのが、スポーツモデルたるCOOPER Sの特徴。ポップさよりもスポーティさを優先している。テスト車はオプションのレザークロスパンチというシート表皮を使い、ゴージャス感も演出している。これも上位モデルらしいクオリティには欠かせない部分だ。
またメーター配置やトグルスイッチなど、MNIらしいインテリアは巧みに継承されているが、センターメーター部は標準装着のナビゲーションモニターとなり、スピードメーターはステアリング奥の一般的な位置へ移動している。ナビ等はBMWのiコントローラーと似た、ロータリーコマンド式で操作。タコメーターはその横に配置されるが、スポーツユーザーにとっては半円形(盤面としては三日月型)で小さいため、多少視認性が落ちたという印象がある。全体的には独自性を残しつつ、サイズアップにより居住スペース(特にリア)が広くなり、そういう面からも使い勝手は向上したといえるだろう。
編集長つかポン試乗レポート
安定感の高まりを活かしたい
袖ヶ浦フォレストレースウェイでは、2013年の2月にR56 JCW(6速AT 純正ランフラットタイヤ装着)で1分20秒909、R56 JCW GP(6速MT・純正タイヤKUMUHO ECSTA V700装着)で1分18秒933を出している編集長つかポンがドライブ。5月下旬の今回の取材日は、かなり気温が高く、単純比較はできないが、参考までにベストラップを比較してみると、以下のようになる。
F56 COOPER Sのベストラップは1分24秒614。最高速は156.6km/hだった。気温の差を差し引いても、JCWが相手ではやや分が悪そうだ。もっともCOOPER S同士の比較なら、ほぼ同じポテンシャルと推測される。装着タイヤはハンコックのVENTUS S1 evo2のランフラットだが、意外にグリップは高く、ブロックのヨレも少なくて、インフォメーションにも優れるので、ハンドリングは楽しいものだった。
ただし、R56に比べ、操舵の反応はさらによくなっているものの、リアの粘りが強く、アンダーステア傾向にあるので、足まわりのチューニングでは、このリアのスタビリティを活かしたまま、フロントのグリップをさらに上げる方向で、ニュートラルな挙動に持っていき、速さのカサ上げができればと考える。
2L化によるトルクアップは新しい武器だ。が、L.S.D.の未装着やDSCの介入が響いて、トラクションとして活かしにくい。しかし、逆にいえば、L.S.D.の装着やDSCの介入を遅らせるパーツ選びによって大幅タイムアップは間違いないともいうことができる。