筑波スーパーバトルGR COROLLAクラス詳細レポート 「HKS×ADVAN×谷口信輝」編
筑波スーパーバトルGR COROLLAクラス詳細レポート
「HKS×ADVAN×谷口信輝」編
レブスピード11月号でお伝えしたHKS×ADVAN×谷口信輝、CUSCO×POTENZA×佐々木雅弘のタッグによるGRカローラのタイムアタック。
2023年12月6日に開催されたREVSPEED筑波スーパーバトルでは、さらにBLITZ×DIREZZA×蘇武喜和の組み合わせも加わり、注目クラスの走行となった。
各車1分1秒台をマークするだけに、GRカローラのポテンシャルには目を見張る。そして、タイムの裏側にある、各社のチューニングの指向にも注目したい!
ここでは当日の各車の模様や、タイヤ履き比べでのセクタータイムも含めて、密着レポートをお送りする。
本ページは、「HKS×ADVAN×谷口信輝」編だ。
HKS GR COROLLA RZ MORIZO Edition
■車両重量1463kg■最高出力316㎰/6000rpm ■最大トルク42㎏/4200rpm ■ブースト1.9㎏/㎠ ■HKS 試作空冷式オイルクーラー ■HKS 試作インタークーラー ■HKS 試作コールドエアインテークキット ■HKS カーボン製エンジンカバー ・フューズカバー ■HKS リーガマックススポーツ ■HKS 試作Mastery ECU ■クスコ L.S.D. RS(F&R) ■HKS ハイパーマックスR試作(F22㎏/㎜ R26㎏/㎜) ■エンドレス ブレーキパッド CC-Rg ■ADVAN Racing RG-4(18×11.0J 30) ■GR×GROW Design エアロパーツ フロント /サイド/リア/ウイング ■ブリッド ZETA Ⅳ ■GRカローラ一部改良仕様 純正パーツ流用
HKSが注目するGRカローラの強み
4WDである上に295幅のタイヤが履ける
GRカローラでスポーツ走行とタイムアタックを楽しむ。他車ではあまり例のない、HKSは強みがあるという。
車両の完成度はもちろんだが、4WDであるうえに、純正フェンダーの状態で265/35R18どころか、295幅のタイヤが履ける事実だ。純正タイヤよりはるかに太い。
HKSは筑波に数々挑んできた。得たデータでは、サスセッティングがとれていれば、タイヤのグリップを上げるほどタイムの伸び率は高かった。だからGRカローラと295幅の組み合わせは期待値が大きい。さらにパワーアップに対しての器も万全にできる。
RZモリゾウエディションをベースにする今回のスペックは、その実践の第一弾であろう。昨年の夏に行った本誌の筑波タイムアタックではタイヤに265/35R18を装着し、エンジンパワーもノーマルだった。今回はタイヤサイズに295/30R18を選び、ECUが書き換えられた。
エクステリア/インテリア
写真の装着タイヤはADVAN NEOVA AD09の295/30R18。マッチングにHKSではリアはフェンダー内に少し手を入れ、トレッドも調整。セオリーに沿った現車合わせは必要だろう
ベースはモリゾウエディションなので標準が2シーター。室内はシートがブリッドのZETA Ⅳに変更されている
サスペンション
車高調は今春発売のHIPERMAX R
このハイレートの仕様も購入できる!?
サスキットは今春発売のハイパーマックスRが備わる。これはサーキット走行やワインディングをターゲットに置くモデル。減衰力調整は30段で、全長調整式車高調となる。
GRカローラの純正ダンパーは減衰力が低速域から早く立ち上がり、スプリングの特性とあわせて旋回性と安定性、そして4WDのトラクションをつくりだしているらしい。HKSは、そこも押さえて仕上げた。
ひとつバネレートは、タイムアタック用にフロント22㎏/㎜・リア26㎏/㎜と高い。製品の標準バネレートはもう少し低いが、このハイレートの仕様も提供する計画がある。
サス以外のフットワーク系のチューニングは、純正装備のトルセンL.S.D.がクスコの機械式に組み替えられている。ブレーキパッドはエンドレスだ。
HIPERMAX Rを装着。フロントは内輪の接地性にヘルパースプリングを併用。試作のアッパーマウントは前後ともサスを的確に動かすピロ式
フロントのピロアッパーはキャンバー調整式。タイヤハウス側にキャンバーの目盛りがあり、作業性を向上させるGRカローラに合わせた仕組みだ
エンジン
試作の吸気系・冷却系パーツを装着
ECUも書き換えてパワーアップ
昨夏の本誌筑波アタックでは、エンジンチューンはマフラーの交換と空冷式オイルクーラーの追加のみだった。
新たに試作のコールドエアインテークキットとインタークーラーが取り付けられ、ECUも書き換えられた。GRカローラのECUは制御の基本こそGRヤリスに似るが、新しいデータも見られ、解析に励んでいる最中という。
開発段階だがエンジン側のトルク制御と、駆動側4WDの負荷とのバランスを取りながら引き出した性能は、最大ブースト1.9㎏/㎠時に最高出力が約10㎰、最大トルクが約1㎏-m上がっている。
参考にHKSのテストではモリゾウエディションのノーマルは、アクセルの踏み方次第でブーストが1.7㎏/㎠付近に達し、上の回転域に入ると約1.4㎏/㎠に落ち着いた。その推移ももとにブーストアップしているわけだ。
手前のシュラウドもコールドエアインテーク専用で、外気を取り込む部分の形状がノーマルより拡大されている。さらにターボ側につながるインテークパイプもカーボンだ
冷却系には試作の空冷式オイルクーラーとインタークーラーがつく。オイルクーラーの効果は絶大だ。夏場の筑波では5周の連続走行で油温が112℃、水温が101℃以内に収まった
マフラーはリーガマックススポーツ。テールはφ119のチタンで左右W出し。サーキットテストで取り付けなども検証した(2024年1月末現在RZのみ適合)
タイヤ
タイヤサイズは295/30R18
銘柄はグリップが異なる
AD09、A052、A050の3種類を揃えた
ストリートでの強さも掲げるスポーツラジアルのADVAN NEOVA AD09 295/30R18。レースフィールドが誕生の原点、ADVAN A052 295/30R18。タイムアタックでは定番、SタイヤのADVAN A050 295/30R18(コンパウンドG/S)。当日、HKSが揃えた3 種類のタイヤである。
参考に昨夏、本誌の企画で行った筑波アタックでは、265/35R18のAD09とA052を試している。気温は30℃を超え、路面温度も相当な条件下、谷口信輝のドライブでAD09が1分3秒796。A052が1分2秒974。見所はHKSがとるサスセッティングだ。バネレートもアライメントもこの時点から変えられていない。継続してタイムが出せたら、カバー範囲の広いサスペンションといえるわけだ。ちなみに富士スピードウェイでのテストでは好感触が得られている。
タイヤサイズはすべて295/30R18。ラジアルがADVAN NEOVA AD09とADVAN A052。SタイヤがADVAN A050 G/S。これはA052
アライメントはフロントキャンバーが約5度。リアキャンバーは車高が下がった分、自然につく約2度。リアのトーはアウト方向
結果
谷口信輝がすべてのタイヤで
自己ベストを1秒以上書き換える!
いちばんはA050の1分1秒316
タイヤ別ベスト&セクタータイム
AD09 295/30R18
タイム1分2秒788
セクター1: 25秒730
セクター2 :25秒767
セクター3 :11秒291
最高速 172.662㎞/h
A052 295/30R18
タイム 1分1秒689
セクター1: 25秒220
セクター2 :25秒439
セクター3 :11秒030
最高速172.276㎞/h
A050 G/S 295/30R18
タイム1分1秒316
セクター1:24秒987
セクター2:25秒304
セクター3:11秒025
最高速172.139㎞/h
タイヤはAD09、A052、A050の順に走り、グリップ性能が上がるにつれてタイムも伸びた。
最速タイムが出たA050では、セクター1が25秒を切っている。前回からのタイムの伸びシロと安定感ではA052の結果が光る。そしてAD09のタイムだ。A052との差は約0.9秒に迫った。
例えば手軽なAD09で練習し、腕を磨いてA052へステップアップする。このHKSが提案するパッケージならスポーツ走行が満喫でき、かつタイヤに応じたタイムも刻める、といえそうだ。
谷口信輝のコメント
「冬の気温もあるが、エンジンは力を感じた。6500rpmまで回したけど、夏よりシフトアップのポイントが早くなった。前はダンロップまで3速だったのが、行くまでに自然と4速に入った。それだけ加速もコーナリングも速くなったといえる。
タイヤははじめに履いたAD09では、ちょっとオーバーステアになった。狙ってサスセッティングはリアのトーを開いてるから、それもあるかな。リアタイヤが温まるのが、フロントより少し遅れたかもしれない。
タイミング的に、AD09は2周目の方がタイムは上がった。でも、もう夏に比べると1秒差だからね。
そのあと履いたA052とA050では1分1秒台に入った。A052は前回から1秒以上アップ。A050が1分1秒3。タイヤの性格や用途に合ったタイムが出せてよかった。
挙動が穏やかで、よく曲がる4WD。この結果はGRカローラがベースにあってのこと。サーキットで遊べる、素晴らしいクルマだと思うよ」
HKS モータースポーツプロジェクト
大森 継さんのコメント
「A050の295/30R18ではもうちょっとタイムを期待していましたが、逆にいえばサスはラジアルのA052とAD09、とくにA052とよく合っていました。
これは265/35R18にもいえますが、ハイパーマックスRの開発では装着タイヤに、このクラスの範囲を想定しています。A050だけでいくなら特化させたセッティングも、今後やりようがあります。
ただ、谷口選手の運転をもって、295幅のタイヤとサス側にはエンジンパワーに対して十分な余裕がある。ECUの解析やチューニングが進み、エンジン性能にもっと数値が乗れば、その点でもタイヤの性格をもっと活かせます。
いずれにしても、デモカーは販売中の製品と今後発売するパーツを使って製作しています。これまでの結果から、同じように愛車をつくっていただければ、富士や筑波を面白く走れると思います」
■エッチ・ケー・エス TEL0544-29-1235 https://www.hks-power.co.jp/