グリップや操作性の向上に トレッドの表面を削ってセッティング! タイムアタック用タイヤ削り機 Kezmaru『削丸』にクローズアップ!!

2025/09/30 11:35

グリップや操作性の向上に

トレッドの表面を削ってセッティング!

 
タイムアタック用タイヤ削り機

Kezmaru『削丸』にクローズアップ!!

 

 

タイムアタッカーを中心に話題となっているのが金鈴精工の開発したタイヤ削り機『削丸』だ。
画期的でトレッド表面の皮剥きから形状変更にキャンバー付加まで、狙ったタイヤのセッティングができる。
 

削丸(Kezmaru)

特許出願中 価格 330 万円(税抜き)

 


自身も走る鈴木代表が

筑波で閃き製作に着手

 

金鈴精工の鈴木隆介代表は、自身でもタイムアタックも楽しむ。「5年前に初めてS2000でサーキットを走ったら、あまりに面白くて。2022年にはアタック筑波に出ていました」 ノーマルエンジン、エアコン付き、ラジアルタイヤで1分0秒9が初の戦績だから凄い。この日からタイムアタック用タイヤ削り機、削丸の開発もスタートしている。

 

金鈴精工
鈴木隆介 代表取締役

 

「皆さんが懸命にタイヤを削る様子が気になりました。我々は、精密な真円の切削加工を得意としています。適した方法がありそう。タイヤを同様に、正確に削ってみよう。効果的に削れる機材をつくろうと思い立った。削丸製作のきっかけです」

 

 よく知られる回転させたタイヤの面に粗カンナなどを当てて削る方法は、ゴムに擦る熱が加わってしまい、厳密にはタイヤにはネガな面がある。削丸は鋭利な刃物をトレッドに切り込ませ、剝き続けるイメージで削る。熱の発生も微少だ。

 

真骨頂は刃の突き出し量が調節でき、0.5㎜など、全周を一定の厚みだけ削れ、面も綺麗に仕上がる。キャンバー加工の機能がある。トレッドのプロファイルが変えられ、タイヤ形状のセッティングまで実現した。発想が新しい。

 


発想は『切る』『剥く』

表面の熱劣化を防ぎながら理想の形状に削れる

低速で回転するタイヤのトレッドに高速回転させた鋭い刃ものを入れ、イメージは連続して『切る』『剥く』。ゴムに掛かる熱を抑えながら、一定の厚みのフレッシュな面が出せる。

 

回転テーブルで角度をつけたキャンバー加工も行える。デモ機は最新式で逆回転でき、2 枚刃で多くのトレッドパターンを許容。

 

対応外径500 ~ 720 ㎜。電源AC100V。

 


新品タイヤもユーズドも
ひと皮剥いてタイム短縮

 

手始めに削丸の身近な利用法から。場合により新品タイヤの表面には離型剤が残り、わずかだが硬化などもあるそうだ。また、走行で熱が入ったあとは、冷めながら表面から徐々に硬化が進むという。

 

少し削丸でトレッドを削ると、コンパウンドのフレッシュ面が出る。新品は初期の性能が発揮され、ユーズドはグリップ回復の手段になる。 突き詰めるタイムアタッカーなら車両重量やサスの設定、自身の運転に合わせたプロファイル化だ。

 

①トレッドのゴムの厚みを削り、山の高さ、つまりコンパウンドの剛性を調整する。新品で5分山以下が、好結果をもたらした例も。

 

②タイヤの形状に着目した、接地面積の拡大だ。トレッドを削り込むと、ギリギリまで増やせる。

 

③キャンバーの付加がある。インとアウトで角度を変える以外に、前輪と後輪で別パターンにすれば、またコーナリングが違ってくる。

 

④ショルダー付近に手を入れ、よりグリップを安定させたり、路面に適度に引っ掛かるようにした。

 

自己ベスト更新やスーパーラップ達成に、いま削丸が導く。実践するなら金鈴精工に連絡すれば、導入ショップを紹介してくれる。「念願のタイムに到達した」など、うれしい声が返ってきている。

 


スーパーラップ達成のために

タイヤを精緻に削るメリットとは

「基本の話として新品なら少々。使ったタイヤは0.5 ~1.0㎜削ると、硬化部分が取り除けてフレッシュな面が出ます。触ると質の違いがわかります。タイムアタックは1周勝負だから禁断の領域でもタイヤの形状を変える。接地面は多いほどタイムにつながる。削ってギリギリまで拡げるメリットがあります。ゴムの厚みも調整すれば、コンパウンドの剛性が追求できる。キャンバーをつけるのも効きます」(金鈴精工 鈴木隆介 代表)

 


ショルダーいっぱいまで接地面積を広げる

 

一般にスポーツタイヤの基本形状はラウンドしている。一方、ショルダー付近に注目するとゴムが厚いが、プロファイルは直角までではない。( イラストの赤色の箇所)。削丸でトレッドの中央から削って平に均すと、ショルダーいっぱいまで接地面積が広げられる。

 

 


丸いタイヤと四角いショルダー形状で操縦性は変わる

 

 

荷重が乗ったタイヤは表面のコンパウンドが路面の凹凸に粘着による摩擦で溶け込むように喰いつき、ゴムのヒステリシスもあってグリップする。問題は荷重が減り、ゴムが伸びたとき。形状が丸いタイヤは徐々にトレッドが離れ、運転がしやすい。四角いタイヤは接地面から最大グリップには有利だが、粘らず、いっぺんに抜けて挙動が急変しがち。削丸で、限界域の特性もセッティングが可能だ。

 

 


ショルダーの巻き込みも削り方で解消

 

 

 

直角状のショルダー形状で起こる巻き込み。骨格に対してゴムが厚いため、荷重によってはトレッド側に巻き込まれ、引っ張られては戻るが繰り返される。ゴムの伸縮でトレッドには微振動が起こり、接地面積は安定しない。削り方で接地面の拡大と併せて解消が見込める。

 

 


 

 

フレッシュな面を出しながらキャンバーも付加したサンプル。キャンバーはアウト側からイン側まで、細かくつけられる。また、削る際は空気圧を走行時の温間でのターゲットにし、形状も意識して行うのがコツ。

 

 


8軸のシミュレーターで日々トレーニングを積む

ソフトにインストールした愛車エキシージを駆る鈴木代表。プライベートルームにはアクセスのシミュレーターを設置する。アクションが多彩な8 軸シリンダー式で、操作感は実車さながら。削丸の機能進化とタイヤのセッティングにも役立てる。

 


今年の筑波スーパーバトルにエキシージで参戦

フェーズⅡのスーパーチャージャー搭載車で筑波ベストは59 秒フラット。S タイヤを削丸でセッティングし、狙うは57 秒中盤だ。来年のAttack 筑波にはS2000 に製作中の2.4ℓエンジンを載せ、57 秒台中盤目指して参戦予定。

 

 


開発メーカー  金鈴精工

設立は1971 年。直径が10 ㎜前後までの小径シャフトを切削で専門に製作するメーカー。極細で直径が1mm に満たない加工にも長け、内外から引き合いがある。削丸の随所に永年の精密に削る技術と経験が投入されている。

 

 

■金鈴精工 TEL0428-24-2205 https://www.kanesuzu.co.jp/

 

 

Photos/ 浅井 岳男 Text/ 鈴木 博






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