BLITZ×SA浜松×A PITオートバックス東雲  FL5シビックタイプR/FL1シビック 究極のストリートスポーツ製作プロジェクト 第3話 ECU書き換え効果を計測

2024/11/28 14:02

FLシビック盛り上げ隊

 

BLITZ×SA浜松×A PITオートバックス東雲

 

FL5シビックタイプR/FL1シビック

究極のストリートスポーツ製作プロジェクト

 

第3話 ECU書き換え効果を計測

 

 

ROAD to SFC(Supreme Fun Civic)はFL5シビックタイプRとFL1シビックをベースに究極のストリートスポーツ仕様をつくり上げるプロジェクト。BLITZの小林潤一さん、S浜松の鈴木英二さん、A PITオートバックス東雲の田中智己さんを中核にメニュー開発を進めている。SFC専用パーツも登場! 今回はECUチューニングの効果をシャシーダイナモでチェック!

 

ブリッツのシャシーダイナモ室でSFC仕様ECUチューンの検証が行われた。左からSAHの鈴木英二さん、ブリッツの小林潤一さん、A PITオートバックス東雲の田中智己さん

 

織戸 学アドバイザー兼テスターは今回お休みで、次回のテストドライブに備える。FLシビックの魅力に惹かれ、自らもFL5を購入

 

 

パワコン・パワスロ共存の

ECUチューニングを施す

 

シビックRSも登場し、現行シビックのチューニングはこれからが本番だ。オートバックス×ブリッツのSFCが、その最前線から提案。

 

前回はFL5にブリッツのパワコンを、FL1(6速MT)にはパワスロを備え、ECUのデータには手を加えずにブーストアップを施した。その効果にはSFCアドバイザーの織戸 学選手も「数万円のパーツで、こんなに低回転からトルクが盛り上がっちゃうの!」と目を丸くした次第。

 

 

この日はブリッツ本社にSFCのプロジェクトメンバーが集まり、シャシーダイナモ室でブーストアップの次なるメニュー、ECUチューンの検証が行われた。これにはSFCならではの新しい展開がある。

 

 

いままではパワコン、パワスロによるブーストアップからECUチューンへステップアップする場合には、装着していたパワコン、パワスロをメニューの位置付けから、取り外すのが通例だった。

 

「パワコン、パワスロを共存させるSFC仕様のECUチューンを、新しく開発しました。FL5もFL1も低回転から高回転まで、太いトルクを出し続けられます。街乗りもスポーツ走行も、より適したエンジン特性と体感できるでしょう。最初にパワコン、パワスロのブーストアップをたっぷり楽しんでいただき、次にその効果も併せ持つECUチューンに進めます」とブリッツの小林さん。

 

パワコン、パワスロ装着がブーストアップのSTEP1とすれば、STEP1+専用ECUチューンの追加はブーストアップのSTEP2というイメージだ。

 

FL1の検証中。空燃比の数値とともにノッキングの有無を確認。ECUから抽出したノックセンサーの信号を音に変換し、着用したヘッドホンで聴き分けるSAHの鈴木さん。

 

「FL1は点火時期の学習を安定させるセッティングにも力を入れた」(SAH鈴木さん)、「FL5は狙いどおり。空燃比もよい」(ブリッツ小林さん)。「エンジン特性はストリートにもサーキットのスポーツ走行にも合いそう」(A PIT 田中さん)と、計測結果を見て、それぞれがコメント

 


FL5は375psに!

全域でパワー&トルクが向上

 

FL5のエンジンは排気量2ℓの4気筒K20C型だ。FK2、FK8にも積まれていた。DOHCヘッドにはVTEC(排気)とVTC(吸排気)の各機構が装備され、電動アクチュエーター付きのシングルスクロール式ターボチャージャーが組み合わされる。制御はエアフロ式で、燃料噴射には直噴式を採用する。FL5ではターボに制御、インタークーラーなどが改良を受け、その定格は最高出力330㎰/6500rpm、最大トルク42.8kg-m/2600~4000rpm。ホンダは『究極のVTECターボエンジン』を謡う。

 

 

SFC仕様のパワコン専用ECUチューンはA PITの田中さん、SAHの鈴木さん、織戸 学アドバイザーなどの声を反映し、計測と検証はフルノーマルのエンジン性能から始めた。

 

以下のグラフはブリッツのシャシーダイナモでの計測データ。グラフのカーブはいずれも下から①フルノーマル。②①+吸排気交換。③②+パワコン。④③+パワコン専用ECUチューンとなっている

 


出力特性  

 

水色:ノーマル 赤色:インテークシステムとマフラー 紫色:+パワコン 銀色:+ECUチューン

 

低回転から高回転までパワー、トルク曲線はパワコンのブーストアップでは、ノーマルよりひと回り大きい。それにECUチューンが加わると、ふた回りも大きいラインを描いて推移する。そして、ノーマル時の最高出力323.5㎰/6540rpmには、すでに4700rpm付近で到達し、5500rpm以降は350㎰オーバー。実際のドライビングでも、その変化は明らかに体感できるだろう。

 

 


トルク特性

 

緑色:ノーマル 橙色: インテークシステムとマフラー 茶色:+パワコン 黄色:+ECUチューン

 

街中の発進加速にも使う低回転域は緩やかにトルクが発生し、立ち上がる。ストリートでのシフトポイント、サーキット走行での常用回転の下限付近、それらに関わる回転域は45kg-m超のトルクが続く。

 

 


ブースト特性

 

 

 

水色:ノーマル 赤色:インテークシステムとマフラー 紫色:+パワコン 銀色:+ECUチューン

 

ブリッツが仕込んだセッティングのポイントは以下のとおり。低回転域はECU側でパワコン装着のベースになるブーストがやや抑えられた。ノーマルは中回転域のブーストが少し落ちる。そこはパワコンを積極活用し、高めに維持。高回転域のブーストはターボの効率も加味し、ECU側で加減する。同時に燃料噴射量、点火時期などもECU側で細かく調整し、狙いどおりの結果を導き出せたのだ。

 


①フルノーマル計測

 

最高出力323.5㎰/6540rpm(水色)

最大トルク45.4kg-m/3350rpm(緑色)

MAXブースト1.45㎏/㎠(水色)

 

ターボのブーストは3500rpmでMAXの1.45㎏/㎠に届き、ほかの回転域では約1.35㎏/㎠が掛かる。トルク特性に注目すると、低回転から高回転まで30~40kg-m台の数値が続く。パワーが300㎰を超えるのは5500rpm以上だ。それらの特性を今回の検証ではノーマルの基準値とする。

 


② ①+吸排気交換計測

 

デモカーはブリッツのカーボンインテークシステム、ニュルスペックカスタムエディションマフラーも装着している。続いてノーマル+吸排気交換でのパワー&トルク変化だ。

 

最高出力332.2㎰/6340rpm(赤色)  ノーマル+8.7㎰

最大トルク46.9kg-m/3490rpm(橙色)  ノーマル+1.5㎏-m

MAXブースト1.6㎏/㎠(赤色)

 

吸入・排気抵抗が減少し、ブーストが全域にわたって0.2㎏/㎠ほど高まった。3500rpmで1.6㎏/㎠に達し、高回転は1.5㎏/㎠。パワー、トルクも比例して3000rpmから7000rpm手前までノーマルをしっかり上回る。低回転でノーマルに満たない部分が見られるが、そこはパワコンの出番で、吸入空気量が増やせる。

 


③ ②+パワコン取り付け計測

 

パワコンによるブーストアップは純正ECUの補正機能のひとつ、過給圧制御を巧みに利用するチューニング。その効果は計測グラフからも明解。

 

最高出力349.1㎰/6600rpm(紫色) ノーマル+25.6㎰

最大トルク47.9kg-m/3430rpm(茶色)  ノーマル+2.5㎏-m

MAXブースト1.8㎏/㎠(紫色)

 

低回転からハイブーストが掛かり、2500rpm付近からトルクが盛り上がる。中回転ではブーストが1.6㎏/㎠に高まり、さらに5000rpm手前で約1.8㎏/㎠までアップ。パワーも上昇の一途を辿る。前回の試乗では、とくに低中回転のトルクが際立った。パワコンがノーマルのブーストカーブに倣って、一定のブーストが上乗せされる信号(電圧)をECUに送る。そんな仕組みからブーストアップが得られ、エンジン特性は確実に吸排気交換の段階を超えた。

 

 


④ ③+パワコン専用ECUチューン計測

 

吸排気交換+パワコン+専用ECUチューンのSFC仕様フルスペックだ。最もパワー、トルク、ブーストの各ラインが整って、エンジンはレッドゾーン手前までキレイに回る。

 

最高出力375.1㎰/6390rpm(銀色) ノーマル+51.6㎰

最大トルク51.3kg-m/3620rpm((黄色) ノーマル+5.9㎏-m

MAXブースト1.8㎏/㎠(銀色)

 

 


FL1は247psを刻む

こちらも全域でパワフルに

 

直噴式のDOHC直列4気筒VTECターボ。FL1には、排気量1.5ℓのL15C型エンジンが搭載される。先代FK7用と同型式だが、ヘッドと一体になるエキマニの排気流路変更と斜流形状のタービン採用で、過給特性やレスポンスが高められた。アクチュエーターは電動式だ。最高出力は182㎰/6000rpm、最大トルクも24.5kg-m/1700~4500rpmと優秀。ピーク値はFK7と同様だが、発生回転数が変わり、「力強さ」「伸びやかさ」「俊敏なレスポンス」を並立させている。

 

 

FL1のECUチューンはSAHの鈴木さんが担当。鈴木さんは車種を問わずECUチューンを手掛け、FL1/FK7の勘どころを得ている。事前にパワコン専用のデータをつくり、自社のシャシーダイナモで念入りに試した。当日は検証の前にその成果をメンバーに披露。最初はテストの基準に置くフルノーマルから。


SA浜松のシャシーダイナモ計測データ。いずれも紫色:ノーマル 緑色:パワスロ 赤色:+ECUチューン。すでにSA浜松ではFL1のECUチューンを行っていて、データインストール 、レーシングプラグ交換、パワー測定一式で税込み11万円の価格設定。パワスロ+ECUチューンにも対応

 

 

 

出力特性

※スーパーオートバックス浜松のシャシーダイナモでの計測データ。いずれもグラフのカーブは下から①紫色:ノーマル ②緑色:①+カーボンパワーエアクリーナー+パワスロ ③赤色:②+パワスロ専用ECUチューン

 


トルク特性


ブースト特性

 

 


①フルノーマル計測(紫色)

 

最高出力187㎰

最大トルク28.9kg-m

MAXブースト1.06㎏/㎠

 

グラフの横軸は車速だが、最高出力は大体5900rpm付近から出ている。最大トルクは広い回転域で20kg-m台に届く、割とフラットな特性だ。ブーストは低回転域と高回転域が約0.8~0.9㎏/㎠で、中回転域のみ1.0㎏/㎠を少し超える。


② ①+吸気交換+パワスロ計測(緑色)

 

前回のメニューで、パワスロによるブーストアップと併せて吸気系もブリッツのカーボンパワーエアクリーナーに交換。

 

最高出力217㎰  ノーマル+30㎰

最大トルク33.5㎏-m ノーマル+4.6㎏-m

MAXブースト1.36㎏/㎠

 

パワスロの装着でブーストが低回転域から高回転域まで、一律に約0.3㎏/㎠アップ。低回転域から1.3㎏/㎠近いブーストが掛かって、全回転域の性能が底上げされている。試乗では盛り上がったトルクが十分に体感できた。ただし、ブーストはパワコンの仕組みから、グラフをよく見ると、ノーマルと同じ上下を繰り返す。パワー、トルクカーブにも同期した波がある。そこでECUチューンの出番だ。

 


③ ②+パワスロ専用ECUチューン計測(赤色)

 

最高出力はパワコンの217㎰に対し、248㎰まで上昇。しかし、MAXブーストはパワスロとさほど変わらない。パワスロ専用ECUチューンの効果だ。

 

最高出力248㎰ ノーマル+61㎰

最大トルク37.2㎏-m  ノーマル+8.3㎏-m

MAXブースト1.35㎏/㎠

 

 

最高出力は5900pm付近、最大トルクは3800rpm付近で発生。ノーマル①もパワコン装着②も、ほぼ同回転数でピーク値を記録した。しかし、専用ECUチューン後は3800rpmで早くも198㎰、37㎏-mに到達し、同回転数のノーマル(144㎰/27.2㎏-m)、パワスロ(168㎰/31.6㎏-m)の数値を遥かに凌ぐ。5900rpmでの247㎰、30㎏-mも凄い。ブリッツのシャシーダイナモでの計測でも、飛躍したエンジン特性がはっきり確認された。街乗りやワインディングでは瞬発力もあるトルクフルな走行が、高速道路の追い越しやサーキット走行では力強い加速が期待できる。

 

 

では、鈴木さんのセッティングの概要を紹介。パワスロ、パワスロ+専用ECUチューンのいずれもMAXブーストは1.35㎏/㎠前後だが、後者ではブーストの推移にぶれがなく、高回転まで1.35㎏/㎠を持続。鋭いブーストの立ち上がりやハイブーストの維持など、パワコンの機能性は保ちつつ、ノーマルの段階で見られた、ブーストの段つきと低下をECUのデータ上で補正している。ブーストに見合ったトルクを安定して得るために点火時期の学習機能も攻略し、燃料マップのほか、多数の連携箇所にも手を加えた。パワスロだけに「スロコン」のモードも従来どおり楽しめる。

 


足まわりもさらに進化

次回はサーキットテスト

 

「FL1もFL5も思ったとおりのエンジン特性に仕上がり、空燃比などの確認もできました。FL5はカーボンインテークシステムとニュルスペックカスタムエディションマフラーも明らかに性能のプラスになっています。極上シビックへの道、パワコン、パワスロが共存するSFC仕様のECUチューンに期待してください」とブリッツ小林さん。

 

「よい結果につながって、FL1は細かくECUのデータを合わせた甲斐がありました。このパワーでいまのところ、クラッチなどの駆動系もノーマルで対応できています。織戸さんから『最高』の声が聞けるよう、もう少し次回までにセッティングを詰めます」とSAHの鈴木さん。

 

「パワコンが備えるブーストアップ機能にECUデータのアレンジを加え、FL5はもう一段、高回転までパワーが上がりました。パワコン、パワコンの利点を活かしたステップアップができたと自負しています。FL5もFL1も乗って楽しいはずです」とA PITオートバックス東雲の田中さん。

 

もちろん、シャシーダイナモで計測して終わりではない。メンバーがストリートで試乗を重ね、さらに織戸 学アドバイザーの厳しいチェックも経て、耐久性まで押さえたうえでSFCのメニューとしてリリースされる。次回はストリートでのチェックに加え、富士スピードウェイのレーシングコースでのサーキット走行テストも行う。

 

同時にいずれも試作の車高調ダンパーZZ-Rを試す。ストリートでの乗り心地を追求し、高めたエンジン性能を活かして走れるSFC仕様を目指している。完成すればダンパーZZ-RスペックDSCプラスのマップ制御モードについても、セッティングデータの公開が予定されている。

 

発売中のFL5用ダンパーZZ-Rは『サーキットでタイムアタックまで楽しめる」スペックだ。織戸テスターからは「思いきって、軸をストリートに置くモデルもつくれば」とリクエストがあった。それに応え、減衰力、バネレートをSFC仕様にした試作品をテスト中。ちなみに、エクステリアはBLITZのフロントリップスポイラー、フロントダクトライン、リアサイドディフューザー、リアアンダーディフューザー、リアガーニッシュスポイラーが備わっている

 

 

FL1用ダンパーZZ-Rをベースに、バンプラバーと車高のセッティングで乗り心地とスポーツ性をSFC用にアレンジ。織戸テスターの評価も高かったが、そのデータをもとに、ダンパーは中高速域の減衰力をSFC仕様に変更している。フロント6㎏/㎜、リア5㎏/㎜のバネレートは従来どおり。エクステリアはフロントリップスポイラーとリアアンダースポイラーが備わり、リアアンダーとセット装着の NUR-SPEC QUADマフラーも装着されている。ルーフのブラックラッピングはSA浜松オリジナル

 

 

 

■BLITZ TEL 0422-38-6330

https://www.blitz.co.jp/

 

■A PITオートバックス東雲

東京都江東区東雲2-7-20

TEL 03-3528-0357 

https://www.apit-autobacs.com/

 

■スーパーオートバックス浜松

静岡県浜松市中央区小豆餅4-16-1

TEL 053-476-2180

https://minkara.carview.co.jp/userid/592092/blog/

 

 

 

Photos/小林克好,金子信敏 Text/鈴木 博

 

 






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