【読み切りドラテク講座】現場で忘れがち&無駄なことをしない ドラテク改善レクチャー by 大野尊久
2023/06/01 13:02
- CATEGORY : ドラテク
2023 FSW 第16回 新春おもいっきり7時間耐久レース大会で
富士スピードウェイに当てはめて
現場で忘れがち&無駄なことをしない
ドラテク改善レクチャー by 大野尊久
Rising Westはレーシングドライバー大野尊久が営むレーシングシミュレーターレッスンルームであり、中古車販売店であり、『レンタルレースカー+メカニック+インストラクターのパッケージでサーキット実走レッスン』のサービス拠点でもある。
シミュレーターや実走のレッスンを受けているカスタマーに声掛けして、富士スピードウェイやセントラルサーキットで催されている耐久レース形式の走行会に参戦。
レースを楽しみながら、スキルアップをサポートする活動も定期的に行っていて、1月22日、富士スピードウェイでの『2023 FSW 第16回 新春おもいっきり7時間耐久レース大会』もまさにその機会のひとつだった。以下、その日の走行メンバーに対する実際のレクチャー内容を大野講師の言葉でお届けしたい。
■ライジングウエスト https://risingwest.jimdofree.com/
関連動画1 https://www.youtube.com/watch?v=LxRMZpogcYY
関連動画2 https://www.youtube.com/watch?v=htiLvsXe75M&t=463s
中級者にありがちな改善ポイントはコチラ!
その日の展開的に、テーマは『中級者が現場で忘れがちなこと』『無駄なことをしないドライビング』となった。
ライン取りなどはシミュレーターで日頃からやっているので問題ない。しかし、人それぞれ個人差はあるものの、ちょっと怖さで踏めなかったりとか、ステアリングをもうちょっと切ったほうが曲がるのになぁ~というところで切れなかったりの傾向はあった。
切ることを悪いと思っている人、コーナーをなぞってしまう人、あと、シミュレーターレッスンでも指摘することが多い『視線』について。行く先々を早めに見ていくことが大事。
それによって、リアが流れたときのカウンターステアや目の前で突発的に起きた事故の回避にも、ちゃんと対処できるようになる。
アクセルはスパッと抜いて前荷重を掛ける
しっかり踏める立ち上がりでタイムを稼ぐ
リアルタイムのオンボード映像を観ながらスマホでドライバーにレクチャー。次回ではなく、その直後や次の周で修正を試みることができるので、その場で直せたり、タイムがポンとあがったり、そのシステムの効果は大きかった。
まずは「ちゃんと止まる」へのアドバイス。E36 318isは左ハンドルの右シフト。純正シートとは異なるステアリングやシフトノブ、ペダルとの位置関係もあって、ヒール&トーのリズムを崩し、シフトだけ先に入れて、クラッチを離したらシフトロック気味になってしまったり、クルマとの対話がおろそかになってしまっているパターンが多く見られた。
ヒール&トーはブレーキとのバランスを考えたシフトダウンをしないといけない。アクセルはスパッとしっかり抜く。中途半端にフニャフニャと抜いたりすると、一連の操作のリズムが崩れやすいうえに、クルマに掛かる前荷重が少なく、曲げにくい状況にも陥りがち。スパッと抜くことで、大きな前荷重を得て、その恩恵を利用して曲げる。そんなメリハリが重要だ。
コーナーリングのボトムを上げていく作業は進入側だけに捉われず、まずは立ち上がりで挽回する作戦を採りたい。クリッピングポイントまでにしっかり向きを変え、クリッピングポイントからは憂いなくアクセルを踏んでいけるようにする。
ダンロップコーナーはひとつめの立ち上がりで
イン側にとどまってふたつめ手前から踏んでいく
富士スピードウェイのダンロップコーナーは右に曲がってすぐ左に曲がるというレイアウトで、「斜めに横ぎるというか、直線的に抜けたら速そう」に思えるが、ひとつめの右コーナーを曲がるためにしっかり落として、膨らまないでイン(ふたつめの左コーナーに対してのアウト)側を立ち上がり、ふたつめの手前から踏んでいくほうが実際は速かったりする。
「どこでどうしておくべきか?」不透明な人に
セクター3の走り方アドバイス
セクター3はブラインドコーナーが多く、難しい。どこから切り始めるとか、どこにクルマを持っていくというのを出口から逆算して考えていくと、おのずとどこでどうしておくべきかがわかってくる。
意外と第13コーナーは下っていって、縁石のところで止めたりする。それは勢いを上手につけていって、クルマを転がしてやるということが大事。
いちばん難しいのはGRスープラコーナー。上っていて最後に平坦になる。その平坦になった瞬間にクルマがスライドしていく。もしくはリアが巻いていったりする。その上がった平坦のところで上手にクルマの勢いを抑えて、向きを変えて、平坦なところで止まって、まっすぐ行くようなイメージ。そのコントロールを身につけたい。
セクター3は手前から踏んでいけるコーナーばかり。最終コーナーも外側に振っていって、出口が見えるあたりでアクセルを抜いて向きを変えて、そこから立ち上がっていくようにする。それによって、ストレート区間をできるだけ増やす。ラインはいろいろあるが、僕はそれを選択することが多い。最終コーナーは入るところと出るところが見える。そこを手前から、Uターンしているくらい、かなり首を横に振って、すでに見ている。
コカ・コーラコーナーと100Rの
苦手克服法はコチラ!
コカ・コーラコーナーと100R。切り遅れるということはブレーキを掛けるところが奥に行ってしまっているということ。クルマにもよるが、100mちょっと過ぎたところから、残り50mより手前で、もうステアリングを切っているようなイメージで曲がっていくのを試してほしい。
100Rはクルマやタイヤによって異なるが、2ℓくらいまでの小排気量のNA車両ならインベタっぽく曲がっていく。タイヤのグリップの限界「もうダメです」というところまでいったら、ちょっとだけアクセルを緩めてやると、ノーズがスッとインに向くので、そこからまた全開にする。
ステアリングを戻せていなくて
立ち上がりでロスしているケースもある
ヘアピンの立ち上がりなどでよく見受けられることだが、ステアリングを戻せていなくて、立ち上がりでロスしているケースもある。
まず、戻すには向きが変えられないとダメ。ヘアピンだったら100Rから上がってきて、インにつく50m手前のところから向きを変えている。クルマが横を向くようなイメージで、しかし、アンダーステア気味に曲がっていくようなイメージ。遠くを見て、ゼロカウンターで曲がっていくイメージが僕は速いと思っている。
もっとも、いきなりその領域には進めないから、少なくとも、立ち上がりで舵が残っていないか、注意してほしい。
エンジンの音で判断しないで
回転計を見てレブ手前までしっかり回す
エンジンをちゃんと回すことも肝心。エンジンの音で判断して上げている人が意外と多い。ちゃんとレブ手前、レッドゾーン手前まで回す。
なぜかというと、回して、シフトアップして、落ちたときの回転が上がっていないと、そこからのパワーがもらえないからだ。
そこでロスしているパターンは少なくない。先が下っているようなところはトルク重視でポンポン上げていってもいいが、平坦かもしくは上りはきっちり回してエンジンの回転が落ちたところを憶えておき、ここより落とさないために、しっかり回すということを実践する。しっかり回して回転が高いところからまた踏めるようにする。
『忘れがち』「無駄なこと」にならないために
憶えておきたいこと
前述のとおり、大事なのは視線。行きたいほうを先回りして見て、しっかりクリップにつく。つくと思ったらもう出口を見る。そうするとカウンターも自然と当てられる。
ステアリングはスムーズに切る。下っているコーナーはゆっくり切るが、上っているコーナーは結構スパッと切る。
下りは波に乗ってスーと曲がっていくようなイメージ。だから、ゆっくり切らないと曲がっていかない。対して上りはグッと切ったら曲がってくれる。
かくかくステアリングの弊害。よけいな挙動が出る。
切り方はスピードとグリップと荷重によって変わる。入るときはよほどのことがない限り1wayで、速度が落ちたところでもうひとつ切る。すると、もうひとつ曲がる。
アクセルを入れる瞬間には戻すほうに力を入れている。アクセルを踏もうと思ったら、戻す側に意識を!
あと、切っていくときはタイヤのグリップと相談するが、切っていかないで、コーナーに合わせて曲がるイメージだと、タイヤを押さえつけないからグリップしない。「ハンドルを切って押さえつけるから曲がる」という意識を持つことも大事。
アクセルONとOFFの10段階、ブレーキONの10段階、OFFの10段階、ステアリング切り込み10段階と戻し10段階。松竹梅でもいい。それらを『位』をつけて憶えておく。ブレーキもMAXが10なら、これはいくつと憶えておいてほしい。いま何を使った? それでこうなったから、次はこうしようとか。それによって、ここのコーナーはこうしたほうがいいという自身の中でのベストができてくる。上手く表現できないが、結構重要なことだと思っている。
ブレーキはどこで踏むという目標があると思うが、状況で変わる。自身がそこでどのくらいで踏めたかを憶えておく。そして、調整は50㎝とか1mとかの幅でやってほしい。10mや20mでやってしまうと止まらないことも。細かく詰めていく。
リアルタイムの車載映像を観ながら話せるシステム
問い合わせはガラッシアマルテンサイトへ
この日のドライバーとピットをつなぐ通信システムは『ガラッシアマルテンサイト』の猪股京介代表(スーパー耐久で活躍中のドライバー。大野講師とは師弟関係)が持ち込んだもの。
カメラは『セーフィーポケット2』という製品で、それにフィルターを被せたりして、逆光対策を施している。コース上を走っているクルマの車載映像を約1秒のズレで見ることができ、内蔵バッテリーだけでも7時間は大丈夫。スマホの電波で映像を送っているが、国内の国際サーキットはすべてつながることが確認できていて、ライブで観ることができるのはもちろん、その場で巻き戻したり、前日の走行を観たりすることもできる。映像はクラウドに保存されるので、ダウンロードも可能だ。
会話はBluetoothで、クルマからはピットにコースの状況を、ピットからはドライバーに状況判断やドライビングの指示をリアルタイムに伝えることができるのが特徴で、レギュレーション的に問題ないレースや走行会では利用者も増えている。
定価は本体が20万円+税で、サーバー使用料と内蔵SIMの料金が月額2万円+税。本体は買い取りが前提だが、サーバー使用はレースウィークに限られるというケースに合わせて、1日1万円+税、あるいは1レースウィーク(木曜日~日曜日)で3万円+税というプランも用意している。
■ガラッシアマルテンサイト 担当:猪股
北海道札幌市南区北ノ沢1744-2
TEL 080-3236-2138
E-mail kyosuke.Inomata@galassia.co.jp
■ライジングウエスト https://risingwest.jimdofree.com/
関連動画1 https://www.youtube.com/watch?v=LxRMZpogcYY
関連動画2 https://www.youtube.com/watch?v=htiLvsXe75M&t=463s