駆動系(クラッチ/トランスミッションパーツ)そしてシフトチェンジのドラテクにまつわる生の声

2022/09/26 12:04

岡山国際サーキットREVSPEEDミーティングで聞いた

「駆動系 クラッチ/トランスミッション パーツ&ドラテクにまつわる生の声」

 

 

レブスピード2022年11月号(9/26発売)では、「駆動系にまつわるドラテク&チューニング」を掲載している。これにともない、8月9日に岡山国際サーキットにて開催されたREVSPEEDミーティングにて、参加者に直撃インタビューを行った。クラッチをはじめ、どんなパーツを使っているのか? そのフィーリングは? さらにシフトチェンジなど、ドラテクの悩みや練習方法など教えてもらった。

 

 

Photos/稲田浩章 Text/勝森勇夫

 


古澤 明さん/GRヤリス

 

ローポジ化したらシフトノブ交換は必須かも

 

全国のサーキットを巡るのが趣味。チューニングは、長距離移動が苦にならないライト指向だ。手を加えているのは、足まわり、ブレーキ、冷却系。駆動系はデフを含めノーマルのままだ。

 

「ミューの高いクラッチに交換したら、もっとよくなるのかもしれないけど……。滑っている様子もないし、いまのところノーマルでも不満はないかな」

 

そう話す古澤さんの、唯一の駆動系カスタムポイントがシフトノブ。

「シートをフルバケットタイプに交換したら、シフト操作がやりづらくなりました。とくに2速への操作がダメ。シフトチェンジの正確性を高めるために、ローポジ化したら、細身のシフトノブ(レーシングタイプ)への交換は自身には必須でした」

 


松田嵩則さん/ZN6  86

 

つながり感のフィーリングはアフター品のほうがよかった

 

レリーズベアリングの修理のついでに、クラッチディスクを強化品(CUSCO/カッパーシングル)に交換。操作性は純正と変わらないままで、クラッチをミートしたときのフィーリングがよくなったと語る。

「ノーマルに不満があったわけではないですが、『どうせトランスミッションを降ろすなら』と、“ついで交換”しました。アイテムは、街乗りを意識して、操作性の悪くならないものを慎重に選んでいます。クラッチの操作に重さを感じることもないし、純正で見られた、ドンとミートしたときの滑り感がなくなった気がします。ペダル操作がラクでつながりがよいから、ヒール&トーの操作もスムーズ。安心感も高いし、何かのついでにやるなら価値はあると思います」

 


荻野 凌さん/AP2  S2000

 

トランスミッションの負担を考え、クラッチは純正派

 

愛車は5年前に手に入れた念願のS2000(AP2最終型)。サーキットを走るためのチューニングポイントは、足まわり、ブレーキ、吸排気。シートにはレカロのRSMを投入、という本気度だ。岡山国際サーキットを走るのはこの日が初。いつもは鈴鹿サーキットをホームコースに腕を磨いている。

 

「クラッチを強化したら、ミッションとか、他の部分にストレスを与えそう。なので、変えない派です。ECUチューンで出力を上げていることもあるし……。交換するにしても、まずはデフ関係を先にやる」。S2000のクラッチやミッションはノーマルでも操作性は良好で、「ドライビングのしやすさを高めるなら、そっちにつぎ込むより断然シートです」と語る。

 

 


橋本佳典さん/FK8 シビック タイプR

 

コースによって、強化の必要性は変わるかも

 

ホームコースは鈴鹿サーキット。以前は年に1、2回程度の走行だったのに、最近になってドハマり。「もう、ひっきりなしに走っています」と笑う。愛車のチューニングは、足まわり、ブレーキ、冷却。エンジンはスピードリミッターのみカットしたノーマル仕様だ。なので、駆動系は純正のまま。

 

「駆動系をやるならL.S.D.。クラッチ はパワーを上げない限り純正でいけるのではというのが見立てです。ただしそれは、いつも走っている鈴鹿の場合。ストップ&ゴー的なここ(岡山国際サーキット)や、ミニサーキットなど、クラッチにストレスの大きコースだと、話は変わってくるかもしれません。ハイパワー車はこのあたりを意識する必要がありそう」

 


和田弘喜さん/FK7 シビック 

 

駆動系はタービン交換時に手をつけます!

 

まだサーキットデビューして間もないビギナーという。愛車は、等身大の性能とスタイリッシュなハッチバックスタイルが気に入って選んだシビックFK7だ。現状、エンジンはブーストアップ仕様。将来的には、スプーンのBIGターボチャージャーキットを組んで、タイプR(FK8)を上回る速さを手に入れたいと話す。

 

 

「駆動系は、エンジンのパワーはもちろん、自身のテクニック的にも、まだノーマルで十分です。等身大のパワーで腕を磨いて、BIGターボを組むときにまとめてガッツリチューニングするつもり」

 

苦手意識のあったヒール&トーの操作も、ペダル位置をDIYで調整して克服。将来の夢を目指し、いまは強化よりも、操作性の向上に注力しているという。

 


野元直人さん/ZD8 BRZ

 

タイムにこだわるなら、絶対に強化です

 

車両はアクセルオートのデモカー。この日は、もうすぐリリースを予定しているオリジナルエアロのテストを兼ねてのエントリーだ。エンジンはノーマルながら、クラッチはORCのレーシングコンセプトに交換済み。その理由をドライバーの野元さんはこう話す。

 

「目的はふたつ。まずはフライホイールの軽量化によるレスポンスアップ。もうひとつが、クラッチのつながりを確実にすること。いずれもサーキットでエンジンパワーをより有効的に使うための手段。コンマ1秒の速さにコダワルなら強化は必須です」

 

多少の操作性の悪化も上級者なら苦になることはないという考え方。気になるトランスミッションの負担は「グリスや各部の強化で抑えられる」と教えてくれた。

 

 

 


谷本憲昭さん/ND5RC ロードスター

 

バランスを崩さないためにもノーマルキープ

 

メルセデスベンツSL55AMGからポロGTiまで多様な車歴を持つ谷本さんが、NDロードスターは「走らせて、いちばん楽しい」と断言するモデル。チューニングはパーティレースのレギュレーションの範囲内がモットー。

 

「駆動系の操作感は、NDが最高。GR86やGRヤリスも試乗したけど、いずれもクラッチの反発力が強く、ミートポイントがつかみにくかった。シフトやペダルの位置関係も自身の体型にベスト。あえて、このベストなバランスを崩す理由はありません」

 

レースのレギュレーションに合わせることで、タイムなどの目標設定にも困らない。谷本さんにとってNDロードスターのパーティレース仕様はいいことずくめなのだ。

 

 


埇田邦男さん/ZN8 GR86

 

いまどきのオルガニッククラッチは侮れない

 

もうすぐ決行予定の、スーパーチャージャー搭載に先駆け、クラッチを強化している。選んだアイテムは、街乗りからスポーツ走行までカバーするカッパーミックスタイプ(HKS/LAクラッチ)だ。性能は先代の愛車(ZN6 86)で体感済み。

 

「以前は、伝達力優先でハードメタルやツインを使ったことがあります。でも、扱いにくく、サーキットでのメリットはそれほど感じることができませんでした。現在、使っているモデルは普段乗りがラクだし、それはサーキットでも同じ。メタルは正直、サーキットでも気を遣わされました」

 

高出力に耐え、しかも扱いやすく操作性も上々。「現在ドキの高性能なオルガニックは侮れません」と、その性能に太鼓判だ。

 

 


中島泰秀さん/NBロードスター

クラッチはパワーの逃げを考えてチューン

 

&Gコーポレーションの中島代表が駆るNBロードスターは、ロードスターカップのオープンクラス仕様。エンジンはハイカム&ハイコンプの定番チューン、タイヤはSタイヤを履く。クラッチはマツダスピードの強化タイプ。駆動ロスの低減、耐久性の向上に加え、トランスミッションやデフへのストレスを考慮しての選択だ。

 

「トルク伝達力や耐久性は、強化品が明らかに上。ただその分、ミッションやデフの負担は大きい。なので、大幅に出力を上げたり、ハイグリップなタイヤを履くなら、クラッチで力を逃してやることを考える。たとえクラッチがバーストしても、ミッションやデフが壊れることを考えれば安いものです」。ハードなチューニング派は、参考にしたい。

 

 


中島僚斗さん/ZN6 86レーシング

 

レースは1回のシフトミスで負けることも

 

86/BRZワンメイクレースに参戦していた車両を購入。岡山国際チャレンジカップ(Nゼロクラス)への挑戦を開始した。クラッチはレギュレーションに適合する強化品だが、「慣らし不足か、少しクセがある」と操作感に少々不満なご様子。シビアなレースを楽しむだけあって、クラッチ操作へのコダワリは大きい。

 

「86はミッションがデリケート。シフト操作は慎重・確実が基本、そのうえでスピードアップを図る練習をしています」

 

中島さんはシフト操作の重要性を、シフト回数×ロスタイムで考えている。「シフト1回で0.1秒ロスしたとして、15回の操作で1.5秒もの遅れ。確実な操作と滑りを防ぐ強化品は、レースには必須です」

 

 

 

 

 






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