新型GR86/BRZのミッションやデフ(トルセンL.S.D.)は変わったのか?開発陣に聞いてみた

2021/07/26 14:09

6月6日に富士スピードウェイにて行われた『FUJI 86 STYLE with BRZ』。ここで新型GR86/BRZのミッションやデフ(トルセンL.S.D.)の変更点をスバルの開発陣に聞いてみることにした。

 

 

 

新型はミッションの操作フィーリングが変わり

ひっかかり感が出なくなっているとのことですが?

 

そのポイントが2点あって、ひとつはお客様から強く指摘されていた、低温時ですね。外気温が低い冬場の朝一にシフトが2速に入りにくい。スポーツカーなので、ある程度のシフトの硬さは我慢してというわけではないですけど、許容していただけるレベルに持ってきていたつもりなんですが、それでも硬過ぎるという指摘が多かったのです。そこで、今回は6速MTのオイルを粘度が低いものに変えた。それでシフト時の荷重を下げています。

 

そしてふたつめのポイントは、オイルを変えるとぜんぶ基本的にやり直しになるんです。中の構造が。

 

 

変えたミッションオイルの基準は?

エンジンオイルのように表しにくいんです。75wというタイプです。いままでのオイルは低温で粘度が高かったのですが、新しいものは低温では粘度が下がって、高温ではいままでと変わらないで維持する設定です。高温時を変えちゃうと高負荷時で走っているときに金属にダメージを与えてしまう。もともとトヨタで横置きのミッションに使っていたオイルです。縦置きミッションに適応するのは初めてです。

 

 

オイルが変わってシンクロなども変更したのですか?

 

そうですね。構造を見直す必要はないんですが、ぜんぶやり直すというのは油膜が薄くなることに対しての見直しです。オイルが変わると内部のギアの噛み合っているときの粘度、油膜の張りが変わってしまうので。粘度を下げると、そこが薄くなるんです。

 

粘度がさらさらになるということは、噛み合っているときにオイルがギアの噛み合い部分から外へ出てしまいやすい。金属の表面に微小な油膜を張るんですけど、その膜が薄くなって、力を掛けたら切れてしまう。金属同士の接触になり、摩耗して壊れてしまう。それが根本になるので、ぜんぶ評価試験をやりなおして、いまのままで行けるパーツはそのまま、対策が必要なものには手を入れています。

 

 

ギア自体は?

ミッションのギアレシオは変わっていません。ファイナルは6速MTが4.1になっています。それはエンジントルクが上がったぶん、最適化したものです。現行型も後期はちょっとローギアード過ぎる感じもありましたので、そこも含めて見直しています。6速ATは3.909。どちらも1段ハイギアードになる。L.S.D.はトルセンがついていますが、これは従来と同じもの。6速MTのベースは現行の6速ATのデフとまるまる同じです。

 

 

 

搭載位置などは違いがありますか?

 

ホイールベースはちょっと変わっているんですけど、トランスミッションとデフの位置は変わっていません。

 

 

6速ATはコーナー進入時など積極的にシフトダウンを受け付けるようになったようですね?

 

いちばん考えたのは、いままでノーマルモードとスポーツモードであまり変化がないことから、スポーツモードを使っていただけるお客さんが少ないことでした。そこで、新型はメリハリをつけたのがポイントです。

 

メリハリを付けるにあたり、スポーツモードなんだから、ちゃんとコーナーへ入るときにダウンシフトしてエンジン回転をキープ、最後にダッシュして加速するときに、ちゃんとトルクのピックアップが出るように。旋回中に必要なエンジン回転数を保とうという思想です。

 

ただし、ゆったり走っているのにエンジン回転が高くてわずらわしいという声も出てくるでしょう。そういうお客さんの心理を読めるような制御にしています。同じスポーツモードでも、例えばゆっくり流して走る場合はブレーキングしてもダウンシフトはしないというようにしています。

 

 

6速ATとVDCの関係は?

トラックモードと協調しているのですか?

 

変速の制御は、VSCとかトラックモードでは変えていないんです、ノーマルとスポーツしかなくて、それは現行車と変わらないんです。ノーマルはそのまま、ノーマルモードに対してVSCをオン・オフにしたりトラックにしたりできるのが存在して、さらにスポーツモードにしたときにVSCトラックというように選べるようになって、その組み合わせで制御しています。

 

 

トルクが上がってクラッチ構造などは変わったんですか?

 

いまはフレキシブルフライホイールといって、フライホイールの中にダンパーまでいかないですが、振動を吸収するような構造を採用しているタイプがあります。最近多いのはフライホイールダンパー、デュアルマスフライホイールがありますけど、それらはこの車両には使用しておりません。

 

というのも、ペダルを踏み込んだときにエンジンの応答性をちゃんと駆動に伝える、ということを優先してメインで設計しています。このような構造でも、このクルマは軽いのと、低回転のトルクとギア比の関係で、発進が凄くしやすい。高出力のクルマ、ターボとかで低回転側が出なかったり、車重があって発進しにくいケースがあるんですが、このクルマは車重、トルク、ギア比の関係で凄く発進しやすく扱いやすいです。

 

 

ミッション自体の許容トルクは?

 

6速MTはギリギリだったのでレベルアップしています。歯など、必要なところに手を入れています。6速ATは基本設計がベースの能力が300Nmくらいにできている。若干いじっていますけど、基本的な構造は変わっていません。

 

 

現行は4速がよくゴリッと鳴くとかいわれていますが

 

4速は細かい話ですがシンクロまで手を入れています。構造系は大幅に変えていないですけど、どうしてもレイアウトがドライバーのすぐ横にあるので、構造上の問題から大きく手を入れられないんです。しかし、4速のシンクロは手を入れていることについては、どこかの場面でお見せする機会があると思います。

 

 

ミッションケースは同じ?

ミドルとリアをはじめ変わっています。(フロントは未確認)

 

 

エンジン系はFA24ベースですか?

 

違いますね。同じなのはボア径だけです。94×86のボア×ストロークの諸元は同じですが、エンジンはFA20を改良して、ボアを拡げたイメージです。もともとの構造が、直噴とポート噴射を流用しているんで、そういう設計思想があるので、2Lをベースに2.4L化したイメージに近い。2.4Lターボは直噴のみですし。

 

 

それに合わせてポートやバルブなども見直した?

 

そうですね、インマニも樹脂に戻りました。これはあくまで軽量化。エンジン単体は若干軽くなっています。フライホイールまで入れるとトントンなんですけど、単体では勝っています。ヘッドカバーも樹脂です。

 

エンジン内部の部品は、軽量化も施しておりますが、質量より信頼性重視です。インマニは最上方にあるので重さは重心高にも関わります。そもそもエンジンは人より前、タイヤよりちょっと前にあるので、そこの重量がかさむとFRなのにいい操舵が得られない、クルマの運動性能に影響するので外面を軽くしています。

 

 

マウント位置は?

位置は同じです。

 

 

 

現行とのエンジン、トルク曲線の比較図

 

 

エンジン特性はどう変わったのですか? 現行は中間でトルクの谷がありましたが

 

全体的に現行から全域で上乗せになっています。凹みについては、仕様上減らせないので、どうしてもこうなっております。かといって全体を下げて凹みを目立たなくするより、低速もある程度トルクを出して、エンジン回転ごとにトルクの伸びを確保しているという狙いです。おおむね23~24㎏-mのトルクが続きます。

 

 

 

 

 






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