佐々木雅弘選手と井口卓人選手に新型GR86/BRZの進化をREV的なマニアック視点から聞く

2021/07/26 10:41

6月6日に富士スピードウェイにて行われた『FUJI 86 STYLE with BRZ』。ここで佐々木雅弘選手がGR86(MT)を、井口卓人選手がBRZ(AT)をデモラン。

 

 

レブスピードでもおなじみのおふたり。新型の進化はすでにさまざまなメディアで紹介されているので、ここではレブスピード的なマニアックな視点から、根掘り葉掘り質問攻めにしてみた。だいたい、ファイナルが4.1になったことで心配になっているのは、レブスピードくらいなもんだw


 

曲がる、止まる、加速するの反応が、現行とまったく違う印象ですが?

 

 

佐々木選手

ふつうのクルマって排気量が大きくなると、ちょっとラグジュアリーになって、ダルになる印象を抱いてくるじゃないですか。どのクルマも進化したといいながら、ホイールベースが長くなったり、トレッドが大きくなったり、大きくなる方向にいって、クルマとしてはダルい方向にいっているじゃないですか。

 

 

でも新型はそういうのが一切なくて、エンジンの搭載位置も若干下がってむしろ低重心で、重くもなっていないのに剛性も高くなっているのでレスポンスも上っているし、操作に対するその反応感が極めて強くなっています。単純にいまのクルマの正常進化です。

 

エンジンもいままでφ86×86ストロークだったんでけど、ストローク自体は変えずにボアだけ変えているので高回転の気持ちよさがあります。ストローク量が増えると高回転が回らなくなって、「ショートストロークのほうが楽しかったなぁ」という人がいると思うんですが、その点はストロークが一緒なので、高回転も気持ちよく回ります。

 

 

 

6MTのファイナルが4.1に変わったことで、ダルな印象はありますか?

 

佐々木選手

じつは4.3も開発の段階で試しているんですよ。いままでは2Lでちょっとパワーが足りないというところを、4.3のローファイナル化で走りを補っていた部分があったのは確かでした。でも、新型は2.4Lでトルクアップを果たしいるが重量自体はそんなに増えていない。そこで4.1にすることによって燃費も向上できます。それはもちろん低速トルクが出たからこそ4.1にできたわけです。なので、ぜんぜんダルさはない感じです。

 

 

6ATもだいぶプログラミングが変ったと聞いたんですけどどうですか。スポーツ走行でもキチッとシフトダウンしますか?

 

 

井口選手

フィーリングよく、イメージ通りシフトダウンしてくれますね。やはりトルクが上って、ファイナルが4.1(※ATは3.9)ということなんでけど、いままでATでサーキット走行をすると、少し立ち上がりに対して、ちょっとダルさがあって、もう少し加速感があったらいいのに、というところありました。その点、新型はすごく加速感が出ているので、じゅうぶんATでもサーキット走行を楽しめます。ATだとアイサイトも付いているので、移動時の安全性がアップする点も、選択肢としての魅力が増えたと思います。

 

 

展示資料によると、AT車のスポーツモードはエンジンブレーキも活用できる。そしてすぐにシフトアップしないで脱出時でも力強く加速できる

 

 

 

 

トランスミッションは今回、フルードに柔らかいものを使ったと聞いたんですけど、シフトフィーリングはだいぶ変わりましたか?

 

佐々木選手

基本的にミッションの構造自体は現行と一緒。オイルを変えたのは低温時のギアの入りやすさをおもに改善しているので、そういうスポーツ走行に対しての変化というのはぜんぜんないですね。その領域ではフィーリングの違いの変化はないです。

 

 

 

トラックモードとかVSCはチューニングされたんですか?

 

佐々木選手

そのあたりは担当していません。というのは、トラクションOFFの素の状態でいかにボクらがクルマの性能を100%理解してセッティングしていくことによって、トラックモードに切り替えたときの制御感をナチュラルにできるかというようなことをしているので。まずは制御なしの状態で、さらにクルマをよくしていることから始まっているんで。トラックモードなどの制御のセッティングはメーカーの方にやっていただいています。

 

新型GR86/BRZワンメイクレースのクルマもおふたりは乗られたと思うんですけど、どのくらい速くなったんですか?

 

井口選手

ボクは乗っていないです。

 

佐々木選手

俺は乗っています。

 

タイムは富士で何秒くらい出ています?

 

 

佐々木選手

タイムはいわないほうがいいし、いまの段階で何秒出ているというのは重要なポイントではないので……。まだセッティングされていないというより、どのような仕様になるかレギュレーション自体が発表されていない。あのテスト車も、基本的にノーマルの状態に対して何をテストしているかというと、油温だったり容量の問題をテストしているわけで。タイムを出すテストじゃないので、まだタイム自体に意味はありません。

ただテスト中ではあるんですけども、現行の2Lよりは、かなり……(笑)。とはいうものの、みなさんが乗ってどう感じるか、何秒出るか、楽しみにして買ってもらったほうがいいと思う。

 

 

 

 

 

水温とか油圧とかのテストもしているということですが、新しいのはいかがですか、水冷式オイルクーラーがついていますけど、そのへんの心配はいかがですか?

 

佐々木選手

現行の86/BRZのワンメイクレースも完全にノーマルの状態だと、油温が厳しいんですね。

 

水温自体は昔みたいに80℃がいちばんパワーは出る、というような設計ではなくて、100℃を超えている状態でしっかりパワーが出るようなエンジンになっています。走っている最中に105℃といった、そういう水温でも大丈夫。というか、いちばんパワーが出るような、おいしいエンジンをつくり、つくろうとしているんですね。

 

でも、油温はレースだと140℃を超しちゃうわけですよ。そこで空冷式のオイルクーラーでしっかり油温を冷やしてやれば、ワンメイクレースでの周回は大丈夫でした。

 

 

この新型はノーマルだと(空冷式オイルクーラーが)付いていないんですけど、ふつうにみなさんがサーキットで走行で10周程度の走りだと、何ら問題ないくらいの性能を水冷式のオイルクーラーで確保しております。

 

水冷式オイルクーラー

 

 

次回の記事は、2022年よりスタートする新型GR86/BRZレース車両について予想をお伝えします






  • Amazon特別プロモーション