【REVSPEED創刊30周年記念企画】世界に誇る日本のチューニング『TRIAL 牧原道夫』編
2020/12/25 18:00
- CATEGORY : コラム 創刊30周年記念インタビュー
TRIAL
最高速チャレンジに魅了された自身の経験をもとに、速さだけでなく、楽しさがともなうカスタマイズを提案するレジェンドチューナー。ハード/ソフトの両面からカーライフをバックアップ
チューニングは多彩な要望を満たすもの
未来を見据えてカスタマーに寄り添う
一般的なチューニングショップのイメージを覆す1500坪もの広大なスペースに、ショールームや作業ピット、駐車場を構え、多彩なニーズに迅速に応える。そんなトライアルは1982年の創業以来、つねにハードとソフトの両面でカスタマーをバックアップしてきた。その指揮を執るのが、チューニング業界の草分け的存在である牧原道夫代表だ。
「オイルやタイヤ、ホイール交換メインのドライブショップに勤めていた頃、ゼロヨンや最高速に魅了されたのが僕のチューニングの原点です。トライアルを創業してからも、商売ではなく趣味として最高速チャレンジに取り組み、1984年には当時301・25㎞/hで最速だったHKSセリカXXを破り、S130Zで307・955㎞/hを達成しました」
速さに魅了され、試行錯誤で突き詰めていくセッティング。トップチューナーなら誰しもが歩む過程であり、そこで蓄積されたノウハウはカスタマー車両にフィードバックされていくものだが、一大記録を達成した牧原代表が感じたのは喪失感だった。
「目標に向けて取り組んでいる最中は楽しかったんですが、いざ到達すると夢がなくなってしまったように感じたんです。それはさらなる記録更新を狙うとストリートや趣味としての遊びから大きく掛け離れ、ひと握りの人間しかコントロールできない極限の域に突入していくから。だからこそ、速さだけでなく、楽しさを含めての提案を大事にし、カスタマーの要望を満たすチューニングをコンセプトに掲げてきました」
そうした想いが根底にあるからこそ、多彩な要望を満たすノウハウや設備の拡充に精力的に取り組んだり、家族や仲間とチューニングの楽しさを共有できるよう、心地よく過ごせるショールームづくりに努めたり、サーキット走行会で同乗走行の時間を設けたりしてきた。ソフトからハードまで、カスタマー第一のバックアップ体制がモットーなのだ。
86/BRZ Raceへの参戦をバックアップするレース車両コンプリート販売。レースサポートの体制も提供できる。背中を押してくれるシステムだ
最近では86/BRZレースに参戦するユーザー向けのレース車両コンプリート販売がそうだ。ベース車両の86レーシングを購入しても、装備の追加や参戦手配などは別途必要。しかし、同社の試みは、そこからの敷居の高さを和らげるもので、即参戦できる状態のコンプリート販売に加え、レースサポート体制までそろえて提供。レースに憧れながら参戦には踏みきれていなかったふたりのカスタマーが、このシステムを利用してスポット参戦を果たしている。
疲労軽減や人車一体感増などに寄与するドラポジの最適化
最適なドラポジとホールド性は人車一体感を引き出すだけでなく、疲労や走行時の負荷も軽減していく。日常のシートポジションに対するストレスや腰痛への悩みなど抱えるドライバーの多さが気になっていた牧原代表は、国内唯一のレカロメディカルショップをトライアルに併設。クルマの各種チューニングと同様に蓄積したフィッティングデータやノウハウを武器に、健康面にも配慮したドラポジの最適化が図れるセミオーダー体制を築き上げている
小柄な人向けには、座面を短くして、ペダルの操作性を高めるなど、体格に応じた加工も手掛ける。加工によって元来の機能を損なうこともない
ヒアリングして最適化していくドライビングポジション合わせ、ホールド性や視界の確保、各種操作のしやすさに加え、身体の負荷軽減にも効果的
なお、車種を問わず、チューニングの有無を問わず、『人車一体』のドライビング環境を提供すべく、牧原代表が7年前から力を注いでいるのが、レカロシートの効能を最大限に活かすドライビングポジションの最適化だ。車種やドライバーの体型、好みや不満を細かくヒアリングしてのシート選択やレール選択。取り付け作業時は入念にベストな着座姿勢を探り、状況によってはシート加工までも施して合わせ込んでいくセミオーダーフィッティング。1万人にもおよぶデータをもとに導き出していくベストポジションは、同社が世界に誇るチューニングテクノロジーと呼べるだろう。
非対応車種だけでなく、体格に合わせた保安基準対応ベースフレームが製作できるように工作機器を備えたテクニカルラボも存在する
2021年は作業過程が安全に眺められるガラス張りのファクトリーに、電子制御介入対策が急務となる最新モデルのチューニングに欠かせない設備導入などにも取り組んでいくという牧原代表。ますます多様化してくるリクエストを高次元で満たすため、これまでどおり、ハードとソフトの両面で革新を図っていく。牧原代表の軸は、かつて喪失感を味わって以来、まったくブレていない。そして、今後も、より幅広い層にチューニングの魅力を伝えていくのだろう。
走行性能アップも抜かりなし!
最近のスポーツモデルは電子制御の介入が強くてクルマに乗せられている印象がつきまとうと感じている牧原代表だが、電子制御をカットするなど、時代に逆行して対処するのではなく、与えられた環境下で、どれだけ楽しさを引き出せるかをテーマにチューニングを施している。コストパフォーマンスに優れた痛快ホットハッチと評価しているZC33Sは、ピックアップ重視のノーマルタービンだとK14Cの魅力が引き出せないと考え、中高回転でストレスなく楽しめるGTⅢ-FXタービンに迷わず変更。また、ドライバーを問わず、旋回性の高さとコントローラブルなハンドリングが得られるように、フットワークやL.S.D.はリアがブレイクしにくいセッティング。前輪のトラクションも稼げるようになっている。もちろん、ブレーキや冷却系も連続周回に対応。ストリート仕様でありながら、サーキットを存分に攻め込めるクルマに仕上がっている。トータルパッケージングはトライアルの一貫したチューニング姿勢だ
トライアル
TEL 072-369-3539
https://www.trial.co.jp/